
社説
「いかにして投票率を下げるか」
選挙の「勝利の方程式」は、いつの時代も「まことしやかに」語られる。春の統一地方選と重なった衆参の5つの補選をリポートした分析記事が日経に出ていた。そのタイトルは『自民党の勝利の方程式』。その総括的な結論が言い得て妙、である。それは「いかにして投票率を下げるか」。広島サミットの余韻が残るうちに衆院選をと、政権与党の自民の期待感は増している。岸田首相はいつ決断するのか。
一党他弱のこの国の政治状況。自民党支持層と無党派層がこの国の今の「2大支持層」といえる。この無党派層は「全くの白紙」ではなく、その時々の選挙を取り巻く情勢で、自民政治への嫌悪感から野党勢力に投じるか、一方で政治への関心が薄い情勢では「投票に行かない」層でもある。つまり「投票率が下がる」。 春の統一地方選、さらに衆参補選でも「過去最低の投票率」が各所で報じられた。結果、自民の勝利が生まれている。分析リポートの結論、「いかにして投票率を下げるか」には頷くしかない現実がある。
そういえば、と思い当たる人も多いのではないか。「投票率の低い選挙は自民が有利」と言われてきている。一方で自治体は「投票率アップ」を選管活動の柱に据えPR活動をし、自民候補も「投票に行きましょう」と街宣する。だが、投票率は選挙のたびに下がっている現実がある。
なぜ投票率が上がらないのか。様々な分析は出ているが、これといった明確な要因はない。だが「選挙制度そのものにある」のも事実だろう。今の衆院小選挙区制の前の「中選挙区制」(選挙区定数が複数)時代は、相応に投票率は高かった。さらに投票心理を反映する「連記式投票」の導入はどうか。当選してほしい候補2人を連記することで、振るい落とされる候補が鮮明化する。
「勝利の方程式」などないが、選挙の制度改正が必要だ。
人口政策と「ジェンダー」「人権」
生き方は、人それぞれ。人口政策で必ず出てくるのが「出生数の増加」「婚姻数の増加」「適齢期人口の増加」…。だが、この課題はすべて「ジェンダー」と「人権」につながる要素を含み、これまで行政が声高に対策を掲げてきた時代から、確実に「そうではない」時代になっている。価値観の違い、ではすまされない「当然の事」になっている。だが…と行政担当者ならずとも、地域人口が日に日に減少する現実を目の当たりにすると…となる現実もある。悩ましき人口減少の地域に暮らし、そういう時代に直面する今である。
2020年国勢調査データを基に、20代から5歳刻みの50歳までの「未婚者数」を翌年21年、速報値データで紙面掲載した。反響は大きかった。「40代で3人に1人が未婚?」など、実際に数値が示す現実は、相当に厳しい状況で、「頭を抱える行政」などと形容した。だが、『生き方は、人それぞれ』という当たり前の価値観が、当たり前として地域に浸透しつつあるなか、そのデータ数値が示す現実は、何が深刻なのかを浮き彫りにしている。
だが、である。現実に人口が年々減少し、10年後、20年後の地域の実態が見えてくるとなれば、やはり手を打たなければならない大きな課題だ。
そこで、側面的な対策から本筋へと重要性が増しているのが「移住・定住」なのだろう。直接的な施策から対外的なアプローチで、人口政策に結び付けていく。人口減少する自治体にとって両面での対策が求められている。冒頭の3つの政策と対外的な移住政策。共に悩ましき課題である。
「未婚率の上昇」は今後も続くだろう。十日町市は小千谷市と「婚活」で連携し、交流・出会いの場を創出していく。津南町は県マッチング登録を補助する。「生き方」を大前提に、地域に暮らす人を増やす、この基本施策からだ。まずは現実を見ることだろう。
カフェに感じる「普段着感覚」
田んぼが広がる一本道を走っていると、道路わきに旗が一本。「カフェ」とある。空き家と思って通りながら見ると、広い窓の室内には椅子とテーブルがある。「この4月から始めています」、若い女性が笑顔で話した。出てきたコーヒーとシフォンケーキは、一般的なお店より量が多く、窓から目の前に広がる田んぼ景色をぼんやり眺め、こういう時間がいいなぁ〜、ひとりで悦に入っていた。
最近、空き家や作業所、自宅車庫などを活用したカフェや食事処が各所に誕生している。その多くが若い女性やグループで、どこも個性的なお店で、その個性と雰囲気を大切にしている心遣いを感じるお店が多い。国道117号の十日町市土市エリアは、ここ数年でいくつものカフェやレストランが誕生し、その多くが女性が経営し、市内外からのお客さん、これも女性が多く訪れている。国道からちょっと入ったカフェは、週末には店外に入店を待つ列ができる人気ぶりだ。来店者がそのお店の印象や良さをSNSで発信し、その連鎖が人が人を呼び、人気を後押ししているようだ。
空き家対策が言われて久しいが、交通の利便性、人の賑わいエリアなどなど、かつての店舗営業の常識が通じなくなっている、いや新たな営業センスが新たな常識を創り出している、そんな印象を抱く女性たちの活躍だ。国道を走り、かつてはメインストリートと言われた国道沿い商店街は、いずこも衰退傾向にあり、地元行政のテコ入れがあっても、なかなか再興が見えない現実がある。だが、空き家活用や作業所、自宅車庫などの活用例は、その「身軽さ」、さらには「発想の転換」、そして「新たな経営センス」を強く感じる。
田んぼの一本道のカフェの女性には、普段着感覚を感じる。構えることなく、自分の時間、ペースを大切に、そのゆったり感に魅力を感じる。
選挙事情、変化のうねり
春の統一地方選は、国政に目が行きがちだが、区市町村議選では「劇的な変化」が起きているようだ。その一つは女性議員の大幅増。さらに区市町村議選、特に都市部では自民現職の落選が相次ぎ、東京杉並区議選では定数48の半分を女性が占める結果となり、現職12人が落選。うち自民9人、なかには自民区支部の現職幹事長も含まれる。杉並区長は昨年6月区長選で岸本聡子区長・47歳が誕生。今回の区議選は『区長が変わった。今度は区議会』を合言葉に女性候補が多数立ち、合同街宣など共闘選挙を行い、新人15人が当選、女性が大幅躍進した。これは杉並区が特別ではなく、今春の統一地方選での大きな傾向になっている。
先月改選のお隣、湯沢町議選は、定数12人に対し女性4人が議席を得て、比率30%は全国平均を大きく上回る。十日町市議会の女性比率も県内では高い。現定数24人に対し女性5人、20%を占め、全国平均よりかなり高い。
今秋改選期を迎える津南町議会は現定数14に対し女性3人、21%余。任期満了の秋の町議選は定数2削減、改選定数12で行う。女性、若者の新人のハードルは、さらに高くなっている。
全国規模で大きな「うねり」が起きている肌感覚がある。地域おこし協力隊を退任後、地域に定住した元協力隊が市町村議選に出馬する傾向が、今春の統一地方選でかなり見られた。一方で、過去の「悪しき慣例」だが、いまだ横行する「集落推薦・地区丸抱え選挙」など、さすがに少なくなっているようだが、だが、まだまだ「負の遺産」は残っているようだ。
今春の「変化」は今後の地方自治体選でも起こるだろう。いや、その変化なくして市町村は生き残れなくなる。それは「人材」を育てることに通じるから。
先ずは今秋の津南町議選。「高齢者議会」と揶揄されるが、今秋は違った顔が多数見られることだろう。