​妻有に生きる

シリーズ連載

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社説

 

広がる「二地域居住」の視点

 「ふるさと回帰」なのか、「脱東京・脱都会」なのか、「新たなライフスタイルを求めて」なのか、東京はじめ首都圏や都市部から、地方移住が広がっている。静岡や長野が人気という。首都圏から数時間圏が条件で、それは「いつでも動ける距離感」。利便性を手放したくない「都市生活者」は、そのまま居住拠点を置きつつ、数時間で行ける地方に新たな居住拠点を持ち、その時の気分や環境変化で「今月はあっち。来月はこっち」など、2拠点生活が流行りのように広がっている。ひととこに定住する生活スタイルから、複数の居住地を持つ「二地域居住」の増加は、今後も傾向として広がるだろう。その地に、ここ妻有も選ばれつつある。

 首都圏から3時間前後。当然選択エリアに入るが、長野や静岡に比べると、そのイメージが違うようだ。新潟ではあるが妻有は長野や群馬エリアに近く、その距離感がなかなかイメージ的に広まらないようだ。妻有の優位性を押し上げた一つは大地の芸術祭。その枕詞は「越後妻有」、だがどうも新潟県に結び付きにくい。梅雨明けも、関東甲信北陸でいつも「越」が取り残される。新潟県を超える『越後妻有』を、すべての分野で前面に出すべきだ。

 やはり発信力なのだろう。本紙1面の角栄さんの時代、あの角さんの新潟県、これですべてが通じた。やはり政治家の存在は大きい。その政治家を選ぶ選挙が今秋9月にあるが、あの時代を知る有権者にとっては、いまの政治家は物足りないだろう。

 国は今年3月、「全国二地域居住等促進協議会」を設立。二地域居住(デュアルライフ)への取り組みを本格化する方針を発表した。新コロナの影響でテレワークや郊外暮らしが進み、都会と地方に居住拠点を持つ「二地域居住」が広がりを見せている。地方行政に新たな局面と対応が求められている。主拠点を妻有に置く、その必然性を生み出すことこそ、人口政策でもある。

「モヤモヤ」と尾崎会長の言葉

 「総モヤモヤ現象」に覆われるこの国。為政者への不信感、この言葉に尽きる。東京オリンピックは23日開幕。妻有の地にもホストタウンの十日町市にクロアチア選手団が事前キャンプに来訪。若い選手の表情、迎える子どもたちや住民の笑顔を見るとモヤモヤは吹き飛ぶ。だが我に返ると再熱するモヤモヤ。この繰り返しが五輪期間中も続くのか。為政者・国への「信頼感」の重さを痛感する。

 新コロナ感染拡大が世界的に広がり、ニュージーランドはいち早くロックダウン、さらにドイツもロックダウン。偶然なのか必然なのか、アーダーン氏、メルケル氏と共に女性リーダーのこの国の人たちはトップを「信頼」、従った。結果は時間の経過が証明している。

 モヤモヤが飛び火している。有観客から無観客へ。宮城県知事は有観客方針を示す一方で、開催地の仙台市長は無観客を要請。住民の生命を守る最大使命を司る行政トップで分かれる対応。さらにモヤモヤが増す。妻有の思いを一身に受けオリンピック挑戦のマラソン・服部勇馬選手が走る北海道・札幌は結局、無観客レースとなり、妻有からの応援団は行けなくなった。

 オリンピック開催の最大のサポートパワーになるはずだったワクチン接種。妻有地域ではほぼ計画通りに進むが、主導する国の見通しの甘さ、供給量の確認不足、接種体制の不備などで全国各所でトラブルが発生している。さらにモヤモヤが増幅している。

 だが、オリンピックは開幕する。東京都医師会・尾崎治夫会長の言葉は、ストンと胸に落ちる。「家で競技観戦するスティホーム・オリンピックのすすめである。この2週間で人流をどんどん減らすことで、感染拡大を防ぐことになり、この期間は有効な対策になる。東京五輪を、コロナ感染をくい止めたと言われる五輪にできる。これこそコロナに打ち勝ったオリンピックではないか」。モヤモヤが少し吹き飛ぶ。

衆院小選挙区「1減」、どうなる6区

 5年ごとの国勢調査は、地域の実態をズバリ表現した。先月2020国勢調査速報値が公表され、これを基に2016年成立の『衆院選挙区・10増10減』の試算結果を公表した。選挙区定数の再編・見直しで、新潟県は小選挙区1減、つまり定数1減の方針が出ている。現在の新潟県小選挙区は6区。これが5区になる。それほど新潟県人口はこの5年間で減少している。数では10万2千人余だが、一つの中核都市規模がなくなっている現実でもある。

 試算はあくまでも机上試算だが、ことはそう簡単に進んでは困る。住民代表の議員の減少、それも国会議員の減少は、市町村議員や県議の減少と、その影響度は相当に大きい。現行の小選挙区6区には、その時々の時勢により指定席的な議員もいるが、ここにきて与野党対決を繰り返すなかで、政治地図の濃淡にかなりの変化が見られる。大きく世論が動きつつある中での今回の小選挙区の区割り変更だ。そう簡単には事は進まないだろうが、自民・政府は来年の通常国会に区割り変更の公職選挙法改選案を提出したい方針だ。

 ここ新潟6区。6区人口の82%が上越エリアが占め、十日町・津南は18%余り。圧倒的な地域差がある。これまでの衆院選でも、上越を制すればほぼ当確と言われ、事実結果がついて来ていた。十日町の古老に言わせると「上越は遠い。新幹線利用はすべて南魚。生活圏も南魚が近い。俺は角さんの頃から、南魚に入った方がいいと言ってきた」そうである。確かに地勢的にも上越圏より魚沼圏だが、政治地図はそう簡単には塗り替えられないのは、時代が証明している。

 だが今回は、法律で決めたことに従わざるを得ない現実がある。その場は『衆院議員選挙区画定審議会』のようだが、その前段はやはり県レベルの政治勢力だろう。誰が主導するのか、その論議を誰がリードできるのか。実力政治家不在の新潟県の真価が問われる。

あれから3年、あと1年

 早い、もう7月。今月9日で在職3年を迎える津南町・桑原悠町長。1986年・昭和61年生まれと聞けば、「若い」と先ず口に出るだろう。8月で35歳になる。町長就任時は31歳。この数字を見ただけで、高齢化率41・9%の津南町の人たち、同じく39・9%の十日町市、さらに53・2%の栄村から見れば、その若さは際立っている。3年前、町長選突入時に聞こえたのは「若ければいいってもんじゃない」、「若さで津南を変えてほしい」。津南町の人たちは若さを選んだ。あれから3年、である。

 地方自治体、とりわけ市町村トップに初就任の首長に対し、失礼ながら我々は「賞味期限」と表現する期間がある。全国的にも女性首長で最年少トップの誕生となれば否が応でも注目を集める。その注目される「賞味期限」である。最年少、女性という好条件が揃うと就任から1年はマスメディアは追いかける。この間の言動など「良い事、そうでない事」を追いかける。

 桑原悠町長はどうだったか。記憶に残るのは「トップセールス」。津南産ユリを持ち込み、当時の東京築地市場のセリに参加、ご祝儀ながら相当なる高値がつき、都内の花屋でもトップセールスで津南をアピール。次は…と期待したが、新コロナの直撃を受けている。

 3年が過ぎ、カウントダウンが始まっている。町長選である。従来の後援組織に加え新たな支援グループも立ち上がり、「最強の2期目」に挑む。十日町市・関口芳史市長は一足早く5月に再選し十日町市政初の4期在職だ。親子ほどの世代差の両市町長だが、ここにきて良好な連携関係にあると聞く。

 津南町はこの夏から秋にかけ改選に影響する場面がある。桑原町長の看板政策「保育園再編」は11億円を投じる。その建設費の入札と着工、議会はどう判断するか。新コロナ打撃で喘ぐグリーンピア津南問題。医療再編に迫られる町立津南病院。行政手腕が問われる懸案が続く。あと1年だ。