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社説

 

シナリオⅩはなかったのか

 いくつかのシナリオが描けた。35歳トップの看板政策の一つが進まず、結局、「一旦見合わせる」事態となった津南町の保育園増築問題、換言すれば保育園再編統合問題だ。

 今春3月の新年度予算で町議会は保育園増築予算を原案通り可決。その約4ヵ月後、建設工事入札を実施したが「不落」。何をどう見直したか詳細は不明だが、11月に二度目の入札、これも「不落」。どうするかと衆目の視線が向いた今月21日の町議会全協で、桑原悠町長は「一旦見合わせる」と年度内事業化の断念表明。聞こえるのは「いまさら…」「がっかりだ…」。計画推進の住民グループも、計画全面見直しを求める住民グループも、どちらからも評価されない「一旦見合わせる」になった。任期まで6ヵ月余の若きリーダーは、大きな正念場を向かえている。

 シナリオはいろいろ描ける。不落の原因の検証結果の主軸は「資材の高騰」が理由。実施設計が固まり新年度予算化を決めたのは2月。そこから入札まで約6ヵ月。まさに「魔の6ヵ月」だった。ウッドショックで予想を大きく超える資材関係の高騰、燃料・人件費高騰が加わり、「全工程で27%の価格高騰」(検証報告)が結果として判明。だが、時すでに遅し。この27%を加算すると、入札参加業者が最後に入れた入札価格に近い数字になる。

 価格高騰を「チェックする力が不足していた」のではなく、予算議決した当初予算を高騰分、補正予算化できなかった行政執行力が不足していた、この事実を前提に、次なるシナリオが描ける。『一回目の入札不落後、臨時議会に増築予算の増額補正を議会提案。議会は「それはできない」と補正予算案を否決。同時に町長不信任案を提案、賛成多数で可決。町長は地方自治法により議会を解散。それに伴い町長も辞職。町長選と町議選の同時選を実施』。

 シナリオⅩはなかった。だがこの問題、先送りでしかない、のではないか。

ピンポイント支援が奏功

 「10万円給付」で大揺れするこの国の政府。現金だ、クーポンだと思惑と利害の交錯が透けて見える、なんとも「厭らしい」姿態を見せた。結局多くの自治体が現金給付になるが、新型コロナ感染拡大が始まった2年前の「10万円給付」と所得制限を設けている以外変わらない。だが、これもおかしな話だ。誰しも感染の可能性があるコロナ対策であるなら、この所得制限自体がおかしい。このコロナ対策、各自治体の知恵出しでもある。

 「1時間もかからずに完売してしまった」。反響のすごさを聞いたのは津南町の飲食小売業者から。新型コロナで大影響を受ける飲食業に対し、町は「独自企画による50%補助」を創設。十日町市でも今春から実施の「オリジナル飲食プラン商品券」にも通じる。十日町市の飲食業界と津南町の同業界では、その規模が違う。「即効性」が顕著に現れたのが津南町。飲食業・小売店を対象に「消費者提供価格の50%補助」を実施。千円の料理が5百円、5千円が2500円、これは大きい。その広告宣伝チラシ作成も補助、まさに「地域内でお金が回る」事業。地酒やそば、餅など地元加工品販売の小売店は、販売開始時間と同時に電話が鳴りだし、予定商品が1時間もかからず完売。これは飲食店でも見られ、予約受付から数時間で予定予約数が埋まった。「びっくりですよ。これほどの反響があるとは」、小売店主は話す。

 ここにヒントがある。国からの財源があるからできる補助事業だが、消費喚起と地域内循環の構図が見えてくる。預貯金率がコロナ以降、急速に高まり、家庭の「内部留保」は確実に増えている。そこに的を得た消費喚起の企画を提供すれば、即座に反応があるという構図だ。だが一方で格差拡大の現実は見逃がせない。コロナ禍で格差は広がっている。コロナ支援で見えたのは「ピンポイント商法」。不特定多数から、特定ターゲットの時代になっている。

時代が求める「感性」

 「お酒はぬるめの燗がいい…」、そんな季節の到来だ。いや熱燗だ、という御仁もおられよう。コロナ禍で「宅飲み」が増えているようだが、この年末年始、少しずつだが宴席が復活している。十日町商工会議所主催の新春年賀交換会も2年ぶりに1月18日開催が決まった。だが、消費量が多い飲食業分野は「まだまだ」の状態。その中で若い経営陣に一新した「津南醸造」の経営戦略に関心が集まっている。

 40代の経営陣には、あのユーグレナの鈴木健吾氏も加わる。同社からも人材投入し、若い感性で斬新な経営戦略を展開する。2年前、鈴木氏が津南醸造に経営参画する記者会見で語った言葉が印象に残る。「発酵分野は酒造も同じ。雪国ならではの発酵文化があり、雪国文化を活用し新たな発酵分野を展開したい」。ミドリムシから次世代の燃料を開発した鈴木氏。そのテクノロジーを酒造に取り入れる試みを始めている。さらに若い経営陣は、販売戦略も意欲的だ。携帯の利便性が高い「パウチ」を活用した携帯日本酒を開発し、アウトドア商戦に参入。従来の清酒の味わいを残しつつも、若い人や女性が好む芳醇な清酒味を作り出し、好評を得ている。

 経営戦略と表現するが、取り組みは相当な試行錯誤の連続だろう。その強味は「若いセンス」と換言できる。酒米生産者らが共同出資で休眠状態の酒造会社の酒造権を買い取り、上信越国立公園・小松原湿原を水源とする良質な湧水を仕込み水に使う津南醸造。酒造という伝統産業を継ぐ新たな感性はその伝統を進化させ、日本酒文化の斬新を創造する。その取り組みは同じ地にある伝統の酒蔵・苗場酒造、松乃井酒造場、魚沼酒造にも波及し、妻有の酒処を全国へ、世界へと発信している。

 若い感性は、産業のあらゆる分野で求められ、人材確保が事業の成否を左右する。地方行政も同様だろう。時代は、その感性を求めている。

衆院小選挙区、再編は住民重視で

 政権選択の選挙といわれ、全国で与野党激突を繰り広げた衆院選は10月末だが、遠い過去のように感じるのは、年の瀬を迎えたせいばかりではないだろう。その衆院選挙区で「10増10減」が次期改選から導入され、新潟県は現6区体制から5区となって国会議員が1人減る。その小選挙区再編がどうなるか、早ければ年末から年始にかけて示される試案に関心が向く。現6区はどうなるのか。

 2020年国勢調査の確定数値が先月30日公表され、新潟県人口は220万1272人、前回2015年国調では230万4264人で、約4・5%減、この5年間で10万2992人減少している。十日町市4万9820人と南魚沼市5万4851人の2つの自治体がなくなった人口数に匹敵する減少だ。深刻な少子化を物語る。

 県人口220万人を小選挙区5区で割ると平均44万人。この数値が小選挙区再編のベースになる。十日町市の関口市長は「柏崎か、魚沼か」と、再編入先を見通している。柏崎市は原発立地自治体であり、その存在の大きさは選挙のたびに政策課題となり、争点になる。柏崎との再編入の場合、日本海に面した自治体が増え、沿岸の存在感が増し、中山間地の妻有地域とは対照的な立地環境の選挙区が誕生する。

 一方の魚沼地域との再編入。「魚沼」の統一ブランドから多くの統一性があり、首都圏とは上越新幹線・関越高速でアクセスの利便性は大きい。さらに立地環境は中山間地の共通項が多く、政策課題も類似点が多い。ただ地図上で見ると、魚沼エリアから上越までとなると広大な選挙区面積となり、県北3区を上回る面積になる可能性があり、行政管理面からも課題だ。

 試案が新年早々にも示されるようだ。5区体制で選挙区が広くなるのは確実。だが暮らす住民の思いは変わらず、その厳しい雪国環境も変わらない。住民重視の再編入を望む。

早く見たい、「いよいよ着工」

 「ここにトンネルがほしい」。構想を含めれば35年余の運動が続く十二峠の新トンネル開削を求める地域運動。初代会長は津南町と縁戚関係がある当時の建設省官僚OB・真島一男参院議員。首都圏と最短で結ぶルートだけに長野県北部地域も加わり、組織再編で再度立ち上がった新トンネル開削期成同盟会。そのトップには十日町市出身の水落敏栄参院議員が就き、地域住民の思いを受け、運動を牽引している。22日の同盟会総会は、新メンバーになった梅谷守衆院議員の言葉が新たな展開を想起させた。長い運動が、大きな展開に向かっていく。

 2014年の4月5日、道路山側の切り立った崖が大崩落、以降122日間、8月上旬まで全面通行止が続き、観光事業はじめ物流ルートがストップし、地域経済に大きな影響を及ぼした。当時の現場写真(1面)を見ると、この山容地形では「完全なる土砂崩落防止」には、相当な困難性があることが分かる。「だから、トンネルがほしい」、これが地元の訴えだ。

 国道353号十二峠新トンネル開削期成同盟会は、新潟県側は十日町市・津南町・南魚沼市・湯沢町・柏崎市の5自治体。長野県側は栄村・飯山市・野沢温泉村の3自治体。ここに関係の衆参国会議員、県議が加わる。「土台を強固に」と梅谷氏が提唱したのは両県知事、長野1区国会議員の加入。両県知事とも十二峠ルートの重要性は認識しているだろう。知事が組織に入ることは両県の行政課題になることを意味する。次なる一歩が見えてくる。

 国道353号を清津川沿いに走ると、清津峡・瀬戸口前の直線道路わきに「美しき郷土に新しい動脈を 国道353号十二峠新トンネル早期実現」の大看板が見える。赤文字の早期実現はもう何度も上塗りされている。「いよいよ着工」と塗り書き換える時を、運動の強化で引き寄せたい。新トンネル開削を「看板倒れに」してはならない。

人材が育つ中高一貫校の存在

 人材はいる、そう感じる場面や人に出会う機会が増えている、ここ妻有で。可能性を求めるのが「教育」なら、それを実証するのは人だ。県立中高一貫校がこの地に開校し15年余。卒業生は県外、国外にいるが、ここ妻有の地で根を張りつつある人もいる。市役所であり、町役場であり、地域のリーディングカンパニーであり、先端をいく農業分野であり、人材が育ちつつある。

 「そんなに勉強して、どこへ行くの。地元に残らないんだね…」。そんな声を幾度となく掛けられ、なぜ…と膨らんだ疑問符を目標に向かう意思で押しつぶし、前を見て歩んだ。「この地に残らなければ意味がないのか…」、自問しつつ、目標に向かっている姿がある。

 人口減少を食い止め、増加策に政策の主軸を置く地元行政。対策は多様だろうが、その渦中にいる世代は、相当なる複雑な心境で、目標に向かっている。県立中高一貫校を政策的に進めた新潟県は、「その目的はある程度達成しつつある」として、県立中高一貫校の再編を打ち出している。開校15年で実績を上げる津南中等教育学校を「定員割れ」を理由に、募集停止の方針を示し、3年間の猶予を設けている。

 この学校への地域の関心は、どうなのか。地元津南町のトップは中高一貫校の存在を、津南町の子育て教育の特色の一つとして、その必要性から義務教育課程の中学生に通学補助し、支援に乗り出している。その存在は妻有地域より、地域外、県外から注目され、「夢の実現・目標の実現」の中等教育の拠点となっている。

 進学校という見方は、視点を変えれば「可能性ある学校」と換言できる。可能性を実証している卒業生は、どこに居ようが妻有の応援団に間違いない。医師になり、教員になり、エンジニアになり、先端農業者になり、政治家も生まれるだろう。相乗効果は確実に地域の教育に波及している。刺激ある存在は、地域のエネルギー源である。

高校・小中学校・保育園、再編統合のあり方

 県立高校の再編は、新潟県の教育方針に直結する。県教委は2023年度の県立十日町高校松之山分校の募集停止方針を打ち出し、先月、稲荷善之教育長が松之山を訪れ、地元の松高支援連絡会と懇談。「松之山だけが特別ではない」、県教委の方針を説明。地元は松高の必要性を強く訴えた。非公開懇談会の熱気は体感できなかったが、地元の強い意志はドアの外まで伝わった。

 市立中学・小学校の再編統合方針を示す十日町市。地域説明会は数地区を残し終了。「小学校1クラス、中学校2クラス維持ができるなら、地元意向に沿う」と市教委はハードルを出す。校区住民からは「数の問題ではない」と十日町市における教育のあり方を問い、一律的な取り組みに反発する。

 町立保育園の再編統合を進める津南町。町中央の小学校区にある3つの保育園を統合する方針を示す。その園舎増築予算は今年度当初予算で可決しているが、肝心の建設工事の担当業者が決まらない。入札2回とも不落、予算執行できない状態が続く。保育園再編は少子化を視野に、保育士の適正配置を実現し、保育内容が充実した保育園環境ができると町は進める。その園舎増築を建設する業者が決まらないというのは、保育園再編とは別の問題が内在している。その検証が行われているが、打開策は見えているのか。

 県立・市立・町立と運営形態は違うが『対住民』という構図は同じ。行政と住民のあるべき関係がクローズアップしている。行政主導、住民主導、協働連携など表現は多様だが、どこに視点を置くかで、その経過と結論は全く違ったものになる。そこに行政の姿勢が見え、何が大切か見えてくる。

 衆院選で我々は何を選択したのか。新たな政権、新たな内閣が誕生しても、我々の生活実感として、何も変わらないでは困る。市町村・県・国は直結している。声をあげる、これだろう。

衆院選結果で聞こえた「なぜ、なぜ」

 選挙はやってみなければ分からない、それを実証した衆院選だった。前回以上の連携共闘が実現した野党市民連合だったが、結果は「敗北」。結果分析はどう料理もできるが、「立憲と共産」の共闘がなければ当選しなかった選挙区は多い。だが一方で日本維新の会の躍進は、自民はイヤ、野党共闘もイヤ、この受け皿になった。「自民の補完勢力」と揶揄される維新であるが、この議席数は今後の国の屋台骨、憲法改正に大きく影響する。その意味で、今度の衆院選結果の意味は大きい。

 「なぜ…なぜ…」。選挙結果が出た翌日、この言葉を何度も聞いた。「3万票も離され負けた人が、なんで復活当選するの」。6区はわずか130票差。これ以上はない惜敗率で、小選挙区は梅谷氏、比例復活で高鳥氏が当選したのは、小選挙区比例代表並立制の選挙制度から合点がいく。

 面白い表現が日刊紙に出ていた。「選挙制度がもたらした『棚ぼた』当選」。事実だろう。北陸信越ブロックで比例代表に重複立候補した新潟県自民の小選挙区候補。選挙区で敗北したが、この比例復活で全員が返り咲いた。選挙制度がなせる業だ。だが、「なぜ、なぜ」の疑問符はそう簡単には消えないだろう。

 「落選候補の得票が当選候補の得票を上回る、これを救済したい」、そんな思いから制度改正された今の選挙制度。事実、3人が立候補し、当選者より落選した2人の合計が上回る開票状況が続いた小選挙区選挙。そこで考案された小選挙区比例代表並立制。だが今回のような結果を招く現実でもある。

 もう一点。投票率の低さ。政権選択の選挙と声高に叫んでも56%の投票率。すでに制度疲労感すら抱く。ここは市町村選挙から投票率アップに取り組むのが近道だ。若い世代の投票率が低いなら、若い世代の候補者を出す、これを市町村レベルで続ければ、必ずや20代、30代の得票率は上がる。それが国政を刷新する原動力になる。

「政権交代か、継続か」、争点はこの一点

 なぜ、このタイミングで…、疑問符を抱いた方もいたのでは。政治日程より早く決まっていた、のではないか。皇室を離れた小室眞子さん、圭さんの記者会見のタイミング。「政権選択の選挙」と呼称される今回の衆院選の最中、衆目の関心を集めた。意図はないだろう、勘繰りはほどほどにしろ、罵声も聞こえる。政治スケジュールはあらゆる好機を使え、これは政治の常道でもあるが…。

 明日31日、投票だ。今回の衆院選、「岸田政権というより、安倍・菅政権9年間の検証の場」というのが世論的な見方だ。さらに、投票行動を促す様々な取り組みが目立つのも今回の衆院選の特徴だ。動画『投票はあなたの声』もその一つ。静かに、淡々と広がっているようだ。同様な「投票行動」を促すネット発信が目立つのも、これまでにない選挙状況だ。その証左が期日前投票の増加。「あの投票所の雰囲気が、なんとも馴染めない」という若い世代に、期日前投票が広がっている。

 論点は明確だ。「政権交代か、継続か」。全国の選挙区すべてに通じる争点だろう。公示後、各社世論調査が出て、選挙区ごとの事前状況が流れるが、日々刻々と変わるのが選挙情勢でもある。「今日の有利は明日の不利」、投票日が迫るにつれ、その変化は激しく、刻々と変わる。一喜一憂の連続だ。

 ここ新潟6区。事実上、三度の同じ対決。野党市民連合の立憲・梅谷守氏は「三振はチェンジ」と、四度目はないことを強調する。5選をめざす高鳥修一氏は「連続当選こそ力」と4選実績の意義を前面に出す。4年前の前回以上の激戦になっている。日刊紙の事前調査も「梅谷リード」「高鳥リード」と割れている。それほど接戦、激戦になっている。

 感染症禍での初めての選挙。新型コロナは選挙運動さえも襲い、人から人への政策論の伝播ができない状況。従来の大規模集会もない。やはり争点は「政権交代か、継続か」、この一点だ。

SNSで急増『投票はあなたの声』

 『投票はあなたの声』。ユーチューブで公開され、それがSNSを通じて流れ、関心が高まっている。「VOICE PROJECT」として俳優の小栗旬さんや二階堂ふみさん、橋本環奈さんなど芸能人14人が選挙における投票について思いをストレートに話す動画だ。

 18歳選挙権は2016年に始まった。この間の国政選挙の18・19歳、20代、30代の投票率はかなりの低空飛行で10%から高くても30%前後。この現実に同世代の著名人から自分の言葉でメッセージを発信する、ただそれだけの動画だが、衆院選公示後、視聴回数が急増している。「投票する」は、生活と自分を考える一歩である。

 またも引き合いに登場してもらうのはドイツの実情。退任するメルケル首相の後任を決める連邦下院総選挙の投票率は約77%だったという。高い関心であり、国を考える国民の思いの強さを感じる数値だ。では、なぜ日本の投票率は低いのか。誘因に上がるのは、その時の政治、政権の政治運営とも大きく関係するのは間違いない。「何を言っても変わらない」、「どうせ、自分の1票なんて」…そうした風潮を作った政治こそ問題視すべきだが、投票率の低さを時の政治に原因を求めても、それは我が身の自省につながる。

 教育現場では「主権者教育が不足している」と、法治国家としての有権者の在り方を大上段から教えるが、それは看板ではあるが、実感として有権者意識にはつながらない現実がある。SNSで流れる『投票はあなたの声』は、同世代の俳優たちが、同時代的な自分の言葉で語る、それがその世代に素直に入るのだろう。

 候補街宣には、その支持者の姿が多いが、実は耳を傾ける人は多い。姿は見えねど、じっと耳を集中している。若い世代は「レッテル張り」を嫌う。投票所の監視もそうだろう。期日前投票は好機だ。投票はすべての一歩。

 投票する、先ずはここから始めよう。

衆院選、選択眼は「生活実感」

 いよいよと言うべきか、やっとと言うべきか、選挙だ。衆院選の任期満了による選挙は、この仕事に就いてからは記憶にない。今月21日が任期満了。1週間を残しての解散、総選挙となる。国政は「一寸先は闇」の通り、その時々の政治情勢により、いつあってもおかしくない。だが、この4年間を振り返る時、いつあってもおかしくない「国民不在の政治情勢」が続いたが、選挙はなかった。その意味で今回の衆院選は、「安倍的政治」と言われた9年余の政治の「大検証選挙」ともいえる。

 妻有地域を含む新潟6区。三度の戦いに参院鞍替えの新人が参戦し、三つ巴が濃厚。だが、その参戦する新人の元々のベースは自民系であり、立憲にも籍を置いたことがあるなど自民現職にとっても、野党市民連合の候補にとっても、出馬自体が「悩ましい存在」。その新人、「無所属は避けたい。公示日にはっきりする」と出馬表明時に話したが、情勢が進むなかで政党所属の幅はかなり狭まっている。

 政策論争が、どうも響いてこないのは、「10万円給付金」や「事業継続給付金」など、その給付対象者は違えど、「現金の直接給付」政策で有権者の目を引こうとしている政策が与野党ともに目立つ。これも政策論争だろうが、新型コロナに乗じた有権者獲得合戦にも見える。一方で消費税の扱いには大きな違いが見える。与党・自公は減額こそ打ち出さないが、野党各党は「5%削減」「消費税廃止」など積極姿勢を見せる。ここは目に見える政策の違いだ。 

 さらに関心が高い「子育て」分野は、細分化されている。次代を担う世代の一番の関心事がこの分野だろう。違いが見えにくい分野だけにメディアの扱いは少なく、各政党の政策チラシを見ても分かりにくい。

 争点は何かより、何を託するか、この視点が重要な選挙だ。有権者一人ひとりの生活実感に基づいた選択眼が求められる、それが今度の衆院選だ。

「ご祝儀選挙」、有権者は見抜いている

 なんとも、短期決戦などと形容するのもためらうが、今月31日、衆院選投開票日が決まった。農業が基幹産業の妻有地域にとって今年産コメ収穫がほぼ終了の時期だが、間、髪を入れぬ今回の総選挙は、新政権を立ち上げた政権与党のご都合主義選挙でもある。

 「お家騒動」と形容され、誕生した岸田政権のスタートにあたり、面白い数値データがある。通信社、日刊紙や系列テレビが新内閣誕生後に実施した世論調査だ。各社数値のバラバラ状態はいつものことだが、傾向で一致しているのは、新内閣は期待感が先行し比較的高い数値が出るのが常だが、岸田内閣は50%前後というかなりの「低空飛行」スタートだ。

 歴代自民政権の応援団ともいわれる読売新聞は56%、同列に見られる日本経済新聞は59%とやや高め。全国都道府県紙など加盟の共同通信は55%。一方、読者に問題意識を促す朝日新聞は45%と一番低い。根強い読者層を持つ毎日新聞は49%。ここに各社の政権へのスタンスが見える。「数字は生きもの、毎日変わる」といわれるが、あの騒動を経て生まれた新政権への国民の視線は、「ご祝儀相場」などと高揚する以前の冷静な視線が、そこにあるように感じる各社の世論調査結果だ。

 ここ新潟6区はどうか。中選挙区制の4区時代は自民・社会の2党指定席が長らく続いた。小選挙区制になり自民議席が続き、民主政権時に連動して民主が議席を取った。典型的な中山間地域が広がる6区。その地勢的な環境は変わらないが、大きな変化は「無党派層」の増加。選挙の勝敗は「無党派層の動向」が重要ポイントだ。

 その無党派の価値観は「生活実感」。政治家に託す思いの一方で、「期待はずれ」と切り捨てることに何の躊躇もない。それだけ政治への関心は、その時々の生活実感が大きく影響し、1票の動向を左右する。耳障りがよい言葉の羅列は、すぐに見抜かれる。

メルケル首相の言葉を思い出す

 「お家騒動」が終わった。家長を決めるだけなら、はいご苦労さまで終わるが、事はこの国の最高責任者を決める舞台に通じているだけに、終わったねぇでは済まない事象である。いまは脱原発で全国を巡る小泉純一郎氏が「自民党ぶっ壊す」と総裁選に打って出た時を、ちょっと想起させたのが河野太郎氏だった。自民党に内在する「諸悪」の払拭と改革願望の表れが地方票の結果だろう。だがそれはガス抜きでしかなく、結局「スリーA」などと形容される重鎮の多数派工作で岸田文雄氏が総裁の座に就き、首相に就任する。一応は表紙が変わった政権与党。対抗する野党勢力とのガチンコ勝負、衆院総選挙は11月に迫る。

 本紙「フランクフルト便り」のヴァウアー葉子さんはドイツに暮らして50年余になる。日々のメール交友でドイツと日本の違いなど、興味深い話題を提供してくれる。メルケル首相の話題は、日本の政権者・首相との違いがよく分かる。

 そのメルケル首相はまもなく退任するが、新型コロナウイルス感染拡大の予防策で打ち出した商業施設など店舗閉鎖が、大きな混乱を招き批判が殺到。すると、わずか1日で撤回を表明。その時の言葉が有名だ。世界に流れた。『私の失敗だ。責任は全て私にある。市民の許しを請いたい』。

 リーダーがしっかりと責任を認め、言葉にする、そこに信頼感が生まれ、信頼度がさらに深まる。

 この国はどうか。8年余に渡る「安倍的な政治」の総決算だった総裁選は、結局、「継承」の色合いを濃くするトップに引き継がれた。この国の有権者の1%程度の党員・党友の多数が河野氏を支持した現実は、この国の「良識」がまだ少し残っている証しだ。「非を認めない」政治への危機意識だろう。失敗は失敗であり、非は非を認めることで民衆は理解を増し、次の言葉に期待する。

 第2ラウンド、というよりこちらが本場。まさに政権選択の総選挙だ。