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社説

 

SNSで急増『投票はあなたの声』

 『投票はあなたの声』。ユーチューブで公開され、それがSNSを通じて流れ、関心が高まっている。「VOICE PROJECT」として俳優の小栗旬さんや二階堂ふみさん、橋本環奈さんなど芸能人14人が選挙における投票について思いをストレートに話す動画だ。

 18歳選挙権は2016年に始まった。この間の国政選挙の18・19歳、20代、30代の投票率はかなりの低空飛行で10%から高くても30%前後。この現実に同世代の著名人から自分の言葉でメッセージを発信する、ただそれだけの動画だが、衆院選公示後、視聴回数が急増している。「投票する」は、生活と自分を考える一歩である。

 またも引き合いに登場してもらうのはドイツの実情。退任するメルケル首相の後任を決める連邦下院総選挙の投票率は約77%だったという。高い関心であり、国を考える国民の思いの強さを感じる数値だ。では、なぜ日本の投票率は低いのか。誘因に上がるのは、その時の政治、政権の政治運営とも大きく関係するのは間違いない。「何を言っても変わらない」、「どうせ、自分の1票なんて」…そうした風潮を作った政治こそ問題視すべきだが、投票率の低さを時の政治に原因を求めても、それは我が身の自省につながる。

 教育現場では「主権者教育が不足している」と、法治国家としての有権者の在り方を大上段から教えるが、それは看板ではあるが、実感として有権者意識にはつながらない現実がある。SNSで流れる『投票はあなたの声』は、同世代の俳優たちが、同時代的な自分の言葉で語る、それがその世代に素直に入るのだろう。

 候補街宣には、その支持者の姿が多いが、実は耳を傾ける人は多い。姿は見えねど、じっと耳を集中している。若い世代は「レッテル張り」を嫌う。投票所の監視もそうだろう。期日前投票は好機だ。投票はすべての一歩。

 投票する、先ずはここから始めよう。

衆院選、選択眼は「生活実感」

 いよいよと言うべきか、やっとと言うべきか、選挙だ。衆院選の任期満了による選挙は、この仕事に就いてからは記憶にない。今月21日が任期満了。1週間を残しての解散、総選挙となる。国政は「一寸先は闇」の通り、その時々の政治情勢により、いつあってもおかしくない。だが、この4年間を振り返る時、いつあってもおかしくない「国民不在の政治情勢」が続いたが、選挙はなかった。その意味で今回の衆院選は、「安倍的政治」と言われた9年余の政治の「大検証選挙」ともいえる。

 妻有地域を含む新潟6区。三度の戦いに参院鞍替えの新人が参戦し、三つ巴が濃厚。だが、その参戦する新人の元々のベースは自民系であり、立憲にも籍を置いたことがあるなど自民現職にとっても、野党市民連合の候補にとっても、出馬自体が「悩ましい存在」。その新人、「無所属は避けたい。公示日にはっきりする」と出馬表明時に話したが、情勢が進むなかで政党所属の幅はかなり狭まっている。

 政策論争が、どうも響いてこないのは、「10万円給付金」や「事業継続給付金」など、その給付対象者は違えど、「現金の直接給付」政策で有権者の目を引こうとしている政策が与野党ともに目立つ。これも政策論争だろうが、新型コロナに乗じた有権者獲得合戦にも見える。一方で消費税の扱いには大きな違いが見える。与党・自公は減額こそ打ち出さないが、野党各党は「5%削減」「消費税廃止」など積極姿勢を見せる。ここは目に見える政策の違いだ。 

 さらに関心が高い「子育て」分野は、細分化されている。次代を担う世代の一番の関心事がこの分野だろう。違いが見えにくい分野だけにメディアの扱いは少なく、各政党の政策チラシを見ても分かりにくい。

 争点は何かより、何を託するか、この視点が重要な選挙だ。有権者一人ひとりの生活実感に基づいた選択眼が求められる、それが今度の衆院選だ。

「ご祝儀選挙」、有権者は見抜いている

 なんとも、短期決戦などと形容するのもためらうが、今月31日、衆院選投開票日が決まった。農業が基幹産業の妻有地域にとって今年産コメ収穫がほぼ終了の時期だが、間、髪を入れぬ今回の総選挙は、新政権を立ち上げた政権与党のご都合主義選挙でもある。

 「お家騒動」と形容され、誕生した岸田政権のスタートにあたり、面白い数値データがある。通信社、日刊紙や系列テレビが新内閣誕生後に実施した世論調査だ。各社数値のバラバラ状態はいつものことだが、傾向で一致しているのは、新内閣は期待感が先行し比較的高い数値が出るのが常だが、岸田内閣は50%前後というかなりの「低空飛行」スタートだ。

 歴代自民政権の応援団ともいわれる読売新聞は56%、同列に見られる日本経済新聞は59%とやや高め。全国都道府県紙など加盟の共同通信は55%。一方、読者に問題意識を促す朝日新聞は45%と一番低い。根強い読者層を持つ毎日新聞は49%。ここに各社の政権へのスタンスが見える。「数字は生きもの、毎日変わる」といわれるが、あの騒動を経て生まれた新政権への国民の視線は、「ご祝儀相場」などと高揚する以前の冷静な視線が、そこにあるように感じる各社の世論調査結果だ。

 ここ新潟6区はどうか。中選挙区制の4区時代は自民・社会の2党指定席が長らく続いた。小選挙区制になり自民議席が続き、民主政権時に連動して民主が議席を取った。典型的な中山間地域が広がる6区。その地勢的な環境は変わらないが、大きな変化は「無党派層」の増加。選挙の勝敗は「無党派層の動向」が重要ポイントだ。

 その無党派の価値観は「生活実感」。政治家に託す思いの一方で、「期待はずれ」と切り捨てることに何の躊躇もない。それだけ政治への関心は、その時々の生活実感が大きく影響し、1票の動向を左右する。耳障りがよい言葉の羅列は、すぐに見抜かれる。

メルケル首相の言葉を思い出す

 「お家騒動」が終わった。家長を決めるだけなら、はいご苦労さまで終わるが、事はこの国の最高責任者を決める舞台に通じているだけに、終わったねぇでは済まない事象である。いまは脱原発で全国を巡る小泉純一郎氏が「自民党ぶっ壊す」と総裁選に打って出た時を、ちょっと想起させたのが河野太郎氏だった。自民党に内在する「諸悪」の払拭と改革願望の表れが地方票の結果だろう。だがそれはガス抜きでしかなく、結局「スリーA」などと形容される重鎮の多数派工作で岸田文雄氏が総裁の座に就き、首相に就任する。一応は表紙が変わった政権与党。対抗する野党勢力とのガチンコ勝負、衆院総選挙は11月に迫る。

 本紙「フランクフルト便り」のヴァウアー葉子さんはドイツに暮らして50年余になる。日々のメール交友でドイツと日本の違いなど、興味深い話題を提供してくれる。メルケル首相の話題は、日本の政権者・首相との違いがよく分かる。

 そのメルケル首相はまもなく退任するが、新型コロナウイルス感染拡大の予防策で打ち出した商業施設など店舗閉鎖が、大きな混乱を招き批判が殺到。すると、わずか1日で撤回を表明。その時の言葉が有名だ。世界に流れた。『私の失敗だ。責任は全て私にある。市民の許しを請いたい』。

 リーダーがしっかりと責任を認め、言葉にする、そこに信頼感が生まれ、信頼度がさらに深まる。

 この国はどうか。8年余に渡る「安倍的な政治」の総決算だった総裁選は、結局、「継承」の色合いを濃くするトップに引き継がれた。この国の有権者の1%程度の党員・党友の多数が河野氏を支持した現実は、この国の「良識」がまだ少し残っている証しだ。「非を認めない」政治への危機意識だろう。失敗は失敗であり、非は非を認めることで民衆は理解を増し、次の言葉に期待する。

 第2ラウンド、というよりこちらが本場。まさに政権選択の総選挙だ。