社説

 

松之山「山塩」に期待

2020.10.31

 新型コロナウイルス感染拡大の影響が、あらゆる分野に影響している。この国を代表する民間企業の業績悪化が連日紙面やニュースで流れる。その数字は4桁に及び、それが億単位という現実は、庶民感覚ではなかなか追いつかず、その見込み赤字の業績が伝わるだけでも相当なる影響と想像できる。数千億円の赤字。もはや事業継続が不可能とも思われるが、そこは大企業なのだろう、国の様々な支援策があり、なんとか「3年後には黒字転換」などと企業トップが話すのを聞くと、ここにも企業間格差を感じてしまう。

 今年4月以降、地元飲食業界、中小企業は相当なるダメージを受けている。国や県、地元市町村の支援策を受けているが、本来の事業展開ができない以上、「先行きが見通せない」の本音だろう。だが、従業員を抱える事業主にとっては、そうも言っていられない現実がある。「止めるに、止められない」、これも本音だろう。

 起業という動きに関心が向き始めたのは、地方の時代が言われた30年余り前から動きとしてはある。ベンチャーであり、フロンティアであり、文字通り開拓者である、その人たちのパワーを地域は求めている。松之山の「山塩」事業化は、その一つだろう。

 かつて、松之山温泉の高濃度塩分質に着目し、その温泉から塩を作り出していた歴史を掘り起し、30代・40代グループが再現を試み、みごと「山塩」を作り出すことに成功した。これは「埋もれた資源を掘り起こした事業化」と、言葉では表現できるが、その着眼はまさに地域のリーディング・グループだろう。この事業化は、地域の元気を掘り起こす事業でもあり、その30・40代のエネルギーが、新コロナで停滞する地域に活力を与えている。

 新コロナで削がれ消沈している地域だが、実は地域にある資源を見直す時でもある。「山塩」は大きな希望だ。

 

県庁14階の心に響いただろうか

2020.10.24

 地域医療の不安要素が、住民不安を増している。県立松代病院の存続を求める地元住民の切なる願いを形にした「6355」の分厚い署名簿。妻有から100㌔離れた県庁14階の病院局長室まで運び込み、花角知事あての存続要望書を知事代理の病院局長に手渡した。この道程が、そのまま新潟県行政の格差感を表出している。これが真冬の1月、2月だったらどうか。屋根に迫る雪深い地から、住民の願いが詰め込まれた署名簿を、雪がほとんどない県庁14階に運び込み、2時間余をかけてたどり着いた県庁の対応は、わずか30分ほど。届けた署名簿の厚さに込められた住民の切なる思いの重さを、冬でも長靴を必要としない県庁は、その切なる願いを肌感覚として分かるのだろうか。21日、県庁14階に足を踏み入れ、率直に感じた。

 県立松代病院は、旧東頚エリアのまさに「命の砦」。県立病院再編は県財政の大きな足かせになっているが、県民の命を守る拠点であることは、それがどこにあろうが、変わるものではない使命を持つ。21日、要望提出に同行した関口市長は、踏み込んだ言葉で地元民の思いを伝えた。「知事から(地域医療の)大きなグランドデザインを示して頂きたい」。すでに任期折り返しの花角知事。中条第二病院問題では精神医療の全県的な医療体制の構築を打ち出した。さらに大きな地域医療問題で求められるのは『命を守る県政』。県は松代病院を地元自治体主体の運営方針を示しているが、それは「責任逃れ」だろう。

 ならば、魚沼圏の地域医療のグランドデザインは、県の責任で示すべきだ。それを求める住民の意思表示が、21日の要望書提出とも言える。

 「利便性の良い地域と同じ土俵に上げないでほしい」、佐藤会長の言葉は、14階の心に響いただろうか。その地に暮らす安心感の支えは頼れる医療環境である。この冬、花角知事には妻有の冬の暮らしを、ぜひ体感してほしい。

変貌する若者気質

2020.10.17

 新コロナで大学生、特に今春入学した学生は、なんとも理不尽さを感じているのではないか。大学構内は立入禁止、授業はオンライン、同期生と顔を合わすことすらなく、夏休みが過ぎ、ようやく本来の授業が始まった大学もあるが、依然、オンライン授業の大学もある。「高い授業料、入学金を払っているのに、これは大学ではない。授業料の一部返還を求めたい」。学生の言葉を新聞で見た。グループや団体で大学に求める動きもあるようだ。新コロナの影響をここにも見る。だが一方で、若者気質の変化は、予想以上に進んでいる。

 7月の都知事選、「選挙に行く時、候補者の主張を調べます。でも、距離を感じてしまうので、多数派から支持を得ている人に投票するようにしています」。9月の自民党総裁選、「隣のクラスの学級委員決めでしょう」。朝日新聞Globe編集部の1971年生まれ玉川透記者が10月号テーマ「民主主義と私」で若者の声をリポート。「私がこれまで取材した若者はみな、政治を語るのを嫌った。個をさらすことに、私の世代より敏感だ。若者は告白した。『もし来月から独裁的な政権になるって言われたとしても、今はそういう時代なんだと受け入れてしまう、そんな自分がいるんです』。最近の若いのは…、そうぼやきたくなる人もいるだろう」。現実にこうした若者が増えているようだ。それは、7年8ヵ月続いた前政権への、若者の高い支持が物語っている。

 「同調圧力」。新コロナの感染拡大で、しばらく身を潜めていた言葉と共に、そうした圧力的な風潮が蔓延している。新コロナは、人間が本来持つ資質の悪しき部分を、あぶり出している。前政権を継承すると公言する菅政権。その同調圧力を政治利用し、真っ当な世論の知見を封じ込める術を、7年8ヵ月で身に付けたようだ。

 選挙は年明けのようだ。どうも世の動きがおかしい、そう感じる秋冷だ。

 

地域おこし協力隊が人気

2020.10.10

 地域おこし協力隊が、新コロナで人気という。兵庫・豊岡市の募集に3週間で56人応募があるなど全国的に応募数が増加傾向にある。その仕組みが見えてきた。マッチングサイト「SMOUT(スモト)」登録が4月の700人余から7月には1800人に激増している。山口・萩市は9人に対し22人応募があり、「脱都会」志向が後押ししている。何を求めるのか。「価値観の多様化で、求める志向も多様。自分の志向に合致する市町村を見つけ出している」。担当者コメントにはうなずける。

 ここ妻有の誘因は「大地の芸術祭」だろう。事実、応募者の動機に「…大地の芸術祭の地なので…」が聞かれる。全国の先駆けで導入の十日町市は、その定着率70%余で全国トップクラス。国内有数の豪雪の地だが、ここにも「大地の芸術祭」効果が見える。だが、地域おこし協力隊の応募は、「選ばれる」段階に入っている。

 国の補助は全国一律だが、これに市町村独自の「加算」を積み、さらに活動内容の特色化を打ち出す市町村が増えている。地域おこし協力隊も「売り手市場」になっている。大地の芸術祭ブランドは、確かに大きな誘導要素になっているが、実は全国で展開する芸術祭は300を超えるというデータがあり、全国がモデルにしている大地の芸術祭だが、その知名度的な濃度が薄まってきている現実もある。

 地域おこし協力隊の定住には、全国的な傾向がある。地域に根付く大きな要因は、生業をどう見つけるか、パートナーとのめぐり逢い、という。それは「新ライフスタイル」を創り出すプロセスであり、3年間、行政や地域がバックアップする取り組みでもある。

 妻有に定住を決めた協力隊経験者は、確実にその地域を元気にしている。国が打ち出した政策でこれほど地域を助け、事業化が成功した補助事業は、そうないだろう。受け入れ市町村に求められるのは、人材としての協力隊の思いを、がっちり受け止めることだ。

ここにも、人材はいる

2020.10.3

 34歳のサンナ・マリン首相と並ぶ同世代の若い女性閣僚4人。一方、先月16日発足の70代「おじさん首脳陣」が並ぶ菅首相と対比する写真が、新聞やテレビで何度も掲載されたのはつい先月。30日のアメリカ大統領選候補2人による公開テレビ討論会も、政策論争とはほど遠い「酷さ」を感じる場面の連続だった。フィンランドのマリン首相の登場は、同国では驚くべき社会現象ではなく「当たり前」の首相就任と聞く。社会保障の充実度、教育への国あげての取り組みなど、人が暮らす社会であるべき当然の姿を、政治が作り出している。そのトップに、男性が就くか、女性が就くか、その性別論議さえ無用であり、「相応しい人物」を選ぶ、それだけを主眼に置いた国のリーダーの選出だ。

 市町村は10年計画を策定している。総合計画、総合振興計画など名称は多種だが、いま十日町市の合併後の第2次総合計画策定の審議会の真っ最中だ。委員30人、公募委員9人。女性委員は10人。先月28日の第4回審議会は9人欠席ながら活発な質疑で、その多くが女性の発言だった。市議5人が傍聴するなか、多分野テーマで市行政の取り組みに意見し、総合計画にどう反映するか高い関心を示していた。

 想起したのが来春の市議会の改選。審議会が取り組む54の施策テーマはすべて市行政、市民生活に直結する分野。いわば市議会で論議しているテーマでもある。市行政の取り組み不足を指摘する意見や、新たな知見を提供する意見など、その情報能力と分析力の高さは、審議会の名に相応しい内実を伴っていた。

 すでに感じているだろう。フィンランドの国情、日本の現状、さらに妻有の実情。なにが不足、なにをすべきか、その場が来春である。住民の生活はその自治体行政と有権者が選択する政治家にかかっている。ここにも、人材はいる。

良品計画 金井会長との「縁」

2020.9.26

 世界31ヵ国に1033店の商業施設を設け、グループ全体売上4387億円のブランド「無印良品」を世界市場で展開する良品計画。隣接、長野の豊野町(現長野市)生まれの金井政明会長は、今回の十日町市との連携協定の思いを語る。「縄文時代から脈々と暮らしを積み重ねる妻有の皆さんの営みに、我々が巻き込まれながら、汗を流していきたい」。十日町市、さらに津南町など妻有地域とは飯山線でつながる「縁」だ。その橋渡しは大地の芸術祭・北川フラム総合ディレクター。これも「長年の縁」。この縁をさらに太い絆につなげたい。

 住民、特に津南町の人たちは疑問が湧いたのではないか。30年余前、長野県境の標高900㍍の広大な地に「無印良品津南キャンプ場」がオープンし、春6月、まだ積雪が残る高原地でキャンプ場開きを行い、良品計画の担当部長が来訪している。他ではできない雪上キャンプが人気だ。その津南町は今回、どう動いたのか。大地の芸術祭の北川フラム総合ディレクターの橋渡しと聞けば、妻有一体での連携協定が視野にあったと考えたい。十日町市と津南町、隣接ながら「意思の疎通」が足りない現状だが、ここは人口9300人余の思いをすべて背負い、34歳の津南町のトップの出番だ。金井会長は思いをしっかり受け止めてくれるだろう。

 良品計画は「世界最大規模」の店舗を今夏、上越市・直江津に開業し、その山間地エリアに大型バスを改造した「移動販売バス」を運行している。金井会長の言葉通り、「地域に暮らす人たち」をしっかり見ている会社姿勢が感じられる。その移動販売バスが来月10日、十日町市を来訪し、市内3ヵ所で店開きする。人気商品など300点を満載している。

 地域の活性化という。地域だけでは限界性があり、どうパートナーを見つけ、タッグを組むか、そこに地域づくりのセンスが求められる。

雪国妻有の「冬の農業」、広域研究を

2020.9.19

 手垢のついた表現だが、「古くて新しい課題」、それは『雪国の冬の農業』だろう。秋収穫を終えると、翌春まで「冬眠状態」の妻有の農業。この課題に先人たちは様々な挑戦をしてきたが、いまだ決め手はない。AI・ICTなど最先端技術の時代にあり、この課題への取り組みは見えてこない。ここは雪国連携だろう。先ずは妻有の市町村の連携から始めたい。

 稲刈り真っ盛りだ。「これほど多くの田んぼが倒伏しているのは、最近見たことがない」、と言われるほど、多くの田んぼの稲がベタベタに転んでいる。7月の長雨と8月の猛暑続きが影響しているという。最新の大型コンバインが見る見る間に刈り取っていく。機械力のすごさを見る思いだ。このコメ収穫が終わり、畑作園芸が終わる頃、妻有は冬を迎え、妻有農業は「冬眠」に入る。取り組みは、ここからだ。

 冬の妻有農業への挑戦に、先人たちはアイデアと苦労を重ね挑んだ。先ずは施設栽培。雪に強いハウスによる温室栽培。熱源は重油のため原油高騰が大きな障害。次は雪のない群馬や埼玉への通勤農業。冬場だけ耕地を借り、寒さに強い作物を作った。だが通勤費用を価格転嫁できず先細りに。先人たちのチャレンジはいまに通じているが、それを後押しするバックアップが求められる。それは公的機関だろう。それは研究部門であり、可能性を果敢に探る意欲的な取り組みだろう。それは自治体を超えた雪国連携であり、その先には雪国の地場産業が見えてくる。

 新潟県高冷地農業技術センターが標高450㍍余の津南町津南原台地にある。昭和50年開設の県の研究機関であり、その名称の通り高冷地や山間地の農業の技術面を担っている。その研究データは相当蓄積され、いまだ実証化されていない貴重なデータもあるのでは。ここを活用したい。「稼げる農業」は選挙時の宣伝公約ではない。広域連携、いま始める時だろう。

問われる議員資質と住民意識

2020.9.12

 「議会改革」、イコール「定数削減」となるが、そればかりではない。住民に選ばれ議席を得ている議員で構成する議会。その運営、議員と住民の関係性、さらに議員活動と議会活動のあり方など課題は多い。十日町市議会は来年4月末、4年の任期満了を迎える。栄村議会も来春、同様に任期満了になる。津南町議会は11月で改選1年を迎える。市町村議会は議員数の差はあるが、担う役割と責任の重さは同じだ。

 議会・議員はとかく住民の憤懣のはけ口になる。「議会は何をしているのか」、「議員は少しも住民の声を聞こうとしない」、「イエスマン議員は要らないし、シナリオ通りの議会は全然面白くない」など、巷間に伝わる茶飲み話は厳しく辛辣だ。住民目線から見ると、どれも「そうだ、そうだ」と頷ける議会の側面と現実でもある。

 十日町市議会は改選後、「議会改革特別委員会」を設けるのが通例だった。だが今議会はその特別委は設けていない、というより「必要ない」と踏み込んだ判断で設置していない。改選を1年後に控えた今春、「議員定数を考えよう」と市議から声が上がったが、その必要はないと一蹴された。

 議会改革は当然、定数問題ばかりではない。新コロナ対策では市当局との「集中質疑」があってもいい。再生可能エネルギーを掲げる十日町市。市議会は傍観者ではない。その実現性と課題・問題に共に取り組んでもよい。人口減少対策が行政施策のすべてに関係する現実を、市議会としてどう受け止め、動こうとしているのか、市民は聞きたい。

 保育園問題に直面する津南町。今議会に住民署名3300余をバックに「大規模化計画中止」を求める住民請願が出ている。すでに議会議決した町政施策に真っ向から問題提起している。栄村議会では先の村長選の火種が燻り続けている。来春の村議改選を視野に入れたカケヒキか。

 議員・議会と住民の関係性が、様々な局面で対峙している。議員資質を問われ、住民意識も問われている。

菅氏に問う、どうする「歪な社会」

2020.9.5

 なにも変わらない、そんな印象を抱く人が多いのではないか。健康理由で、再び政権の座を任期途中で退いた首相の後任選び。神輿に乗せる人を予め決め、「寄らば大樹」「思惑の一致」で群れ、多数になると見るや雪崩現象で、そのまま数の論理を推し進める、なんとも懲りない人たちだ。またも茶番劇を見せられている。14日に選ばれるであろう菅氏は、その政治姿勢に「安倍政治の継承」を掲げる。ならば、安倍政権時代の「未解決」とされる数々の問題にも、当然向き合う責務がある。

 政治の劣化で、不幸を被るのはこの狭い国に暮らすわれわれだ。農家の息子で苦労人と聞く菅氏。いまの地位に至るそのサクセスストーリーは、演歌的な情感になびくこの国の人たちにとって、ある種の共鳴感を抱くだろう。その苦労人が、ある意味で対極にある境遇で育った安倍氏を間近で見て支え、その「格差」の不条理さを感じなかったのか、大きな疑問を抱く。同時に、その格差こそ、実はこの国が直面している最大の社会問題であり、それを作り出した政治が7年8ヵ月の安倍政権そのものではないのか。

 政党政治の原点は、確かに数の論理がベースにある。だが、それを構成する有権者に選ばれた議員個々の資質があってこそ、数の論理がまかり通る。現実はどうか。「寄らば大樹」ではないのか。『群れる心理は、その弱さの証し』とも言うが、今回の自民党の総裁選は、その弱さを数で押し切ってしまおうという、悪しき慣習がまた表出した形だ。その弱さは、言うまでもなく「個の弱さ」であり、資質の劣化でもある。

 7年8ヵ月。財を増やした人もいる。雇用形態の変化で生活不安が増した人もいる。それがさらに「格差」を広げ、圧倒的な数の生活困窮者が、富を持つ限られた人たちの社会を支えているという、歪な社会構造を作っている。

 あと1年。この間に必ず総選挙がある。「明日は」、我々の掌中にある。

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