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社説

新コロナの「真の恐怖」とは

2020.5.23

 「3蜜」(密集・密閉・密接)は、新型コロナウイルス感染拡大のキーワードになっている。これを防ぐ「新しい生活様式」が感染予防につながると、緊急事態宣言解除後、行政機関は声高に進める。これは、これまでの「共生社会・連帯社会」にとって、まさに基本中の基本となる3蜜要素を大前提にした成り立ちである。それを防ぐ、そうした状態を作らない、これはこれまでの人間社会の在り方そのものの大改革につながる、ある意味での「危機」だろう。そこに今回の新コロナがもたらす「真の恐怖」があるように感じる。

 ゴリラ研究で知られ、人間社会のありようを「動物的視点」で検証する京都大・山極寿一学長が、新聞で述べている。『人間の共感社会は、身体の共感によって得られる』。『人間は700万年の進化の歴史を通じて、身体の感覚を通じた信頼関係の輪を作ってきた。その核にあるのは家族である。身体を共有する間柄であり、日常の身体的な接触とその記憶が欠かせない。ハグをいとわず、食事やベッドを共にする』。だが、新コロナにより『それはいま禁止されている。3蜜になりかねない。これが続けば、人間にとって共に生きる力を奪われ、個人がばらばらになってしまう』。

 山極氏はこの先の社会を危惧し、大きな警鐘を鳴らす。『これからはアバター(分身)やロボットが活躍する時代だ。汚染地域や災害現場だけでなく、日常社会で私たちは生身の身体を接触させる代わりに、代替物を通じて交流するようになるかもしれない。それは信頼という原資を直接触れ合うことで作ってきた社会から、距離を保ち、ゆるやかに共鳴する社会へと移ることを意味する。それに私たちの身体や心が耐えられるかどうか』。

 新コロナの「恐怖」は、その感染力と共に派生する「求められる社会変革」にある。いまの社会を築いてきた世代から、次代を担う世代へのバトンタッチは、かなり危うい現実の中にある。

新コロナショック支援、スピード感を

2020.5.16

 「これからが本番だ」。14日、緊急事態宣言が東京や大阪など除き、多くの自治体で解除された。医療関係者、自治体関係者の言葉から、その危機感が伝わる。休業要請に応え、夜間営業を止め、営業時間短縮などに取り組んでいる飲食業関係。「これ以上続けたら、看板を下ろすかどうか、そのものを考えなくてはならない」。夜間営業や通常時間の営業再開を始める飲食店も出ている。これに連動するように、人の動きが先週10日の日曜から目立ち始め、ここ妻有地域でも日中の通行量が増えている。まさに、「これからが本番」を感じる緊急事態宣言解除だ。

 違法性がない限り、個人の行動を制限する法律は、この国にはない。今回の新コロナでは「自粛」「要請」という「お願い」の域を出ない規制措置だが、それでも4月からの人の動きは、急激に少なくなり、人であふれる渋谷、新宿の様子を映像で見ると、このお願いを聞き入れ、従っている人の多さを物語る。この傾向は全国で見られ、14日の解除につながっていると見られる。

 だが、医療関係者が訴える危機感は、まさにこの解除後のこと。「即応できるワクチン体制もなく、PCR検査が容易にできる体制もなく、感染度合を示す陽性率の公表もなく、ここで解除したら、これまで以上に拡散のスピードが増す」。人が動けば、それに伴い当然感染リスクも増し、車社会ではそのスピードは相当速く拡散する。そこの危機感を訴えている。

 大きなダメージを受けている地域経済の支援に、地元行政が動き出している。『減収50%以上は高いハードル』。国の持続化給付金の給付基準だ。1月からの月単位の減収が前年同月比で50%以上が基準。関口市長、桑原町長とも「支援する」と自治体単独での給付金創設を示唆する。まさに緊急性が求められる取り組みだ。自治体トップの主導性を住民は注視し、その実行力を期待している。

自治体トップが見せ始めた国への不信

2020.5.9

 さながら自治体トップの「力量争い」の様相だ。新型コロナウイルス感染拡大予防で国は4日、緊急事態宣言の延長を決めた。これを受ける形で都道府県、市町村のトップが「独自の取り組み」を次々と打ち出している。最たるは大阪府の吉村洋文知事の「自粛解除の基準」発表。国の先を行く判断がついに登場、といえる。緊急事態宣言の延長を決めた国は、「あとは自治体の判断」とした。ここに今の政権の限界性を見た思いだ。

 「あとは自治体の判断」。つまり、この後に起きる事態は、自治体の判断によって発生した事、よって国に責任はない、と言わんばかりの態度だ。情けない国のトップではないか。あれほど必要性が当初から言われた「PCR検査」。少ない実態をようやく認めた専門家会議。ワクチンがない新しい感染症へのアプローチの差が、ここにきて悪しき前例として具現化している。

 大阪・吉村知事が示した「自粛解除の基準」は、一つの自治体だけで事が済む問題ではないことが明白だが、吉村知事があえて発表して背景は「国への不信」だろう。その後ろには、さらに不信感を増す国民がいる。緊急事態宣言の延長後に見せる自治体トップの取り組み姿勢の違いも興味深い。だが、新型コロナウイルスの感染拡大予防は、まずは国民一人ひとりの自覚にかかっているのは、何ら変わりない。

 県立十日町病院の吉嶺院長の言葉が印象深い。『この新コロナで、大都市集中の医療体制のあり方の見直しに迫られているのも事実。妻有のような高齢化で過疎化が進む地域で、新コロナを乗り切れれば、ゼロに抑え込めれば、相当なるインパクトとして強いメッセージの発信になる』。それは『都市と田舎・過密と過疎』の構図という価値観を大きく転換させるものになる。

 医療関係者の懸命な努力に敬意を表すると共に、妻有エリアから感染者を出さない、その気概を共有したい。

迫られる対応、コロナ禍が生む「格差」

2020.5.2

 価値観の転換、社会体制の見直しまで迫る新コロナ禍だ。コロナ感染症の発症前、昨年9月、国は全国の医療機関を名指しで再編統合を示し、新潟県はそれを受ける形で11月、県立松代病院など再編統合が必要とする病院名をあげ、地元行政移管を含め方針を示し、今年9月までに一定の方針を示すように求めた。だが、このコロナ禍。その示す方針とは真逆の「地域医療の重要性」が大きく、強く表出している。

 「命の砦」。山間豪雪地の妻有地方にとって、地元の医療機関は、まさにこれだ。そこの医師はじめ医療従事者は、命の救い手であり、住民の心の拠り所でもある。「妻有地域に感染者を出さない」取り組みは、医療機関と行政・住民の三者連携で懸命の努力が続く。その医療拠点の再編を、国や県は半年前に示し、ごり押しした。いまの深刻な状況から、その論議は「実情を見ない」論点による取り組みであり、事の重要性に気づいていない、その証左だ。

 今度のコロナ禍。思わぬ展開を表出させている。高校生のネット署名が全国に広まり、全国知事会でも国会質疑でも取り上げられた『学校9月入学制』。以前から構想として何度か表出し、立ち消えになっていたが、今回の急浮上は「等しい学びの場の補償」が怪しくなり、このままでは教育格差が生じる事態になる危機感が背景にある。

 テレワークというが、その環境下にある人はできるが、それを支える多数は非正規従業員という現実は、受け入れがたい。さらに、オンライン授業の導入は、義務教育での格差を生む温床になる。県立津南中等教育学校でオンライン授業の公開取材があった。地元津南町のトップも同席したが、同じ義務教育にある町立中学校の導入はこれから。十日町市も同様。コロナ禍で教育格差を出してはならない。

 今度のコロナ感染は、格差を生む温床を様々な場面に生じさせている。非常事態、その認識が真に問われている。

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