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まるごと博物館
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妻有まるごと博物館

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ジオラフティング

津南案内人・小林 幸一

 苗場山麓ジオパークの信濃川ジオラフティングに参加してきました。今回は佐渡ジオパークと糸魚川ジオパークのガイドの皆さんも参加し県境から反里まで下りました。

 太古の昔、信濃川は飯山から上越方面に流れていましたが、関田山脈の火山活動に寄る隆起から行き場を失った大量の雨水は堰を切ったように妻有地方に流れ出し、削り取った両岸には火山活動による火砕流の断面が見られます。

 火砕流の中には無斑晶ガラス質安山岩が多く含まれ、まるでブドウパンにように地層から黒く顔を出しています。この鉱物は石器時代から縄文にかけて加工しやすいので石器として使われました。

 激流下りから岸に上がって休憩をすると川原の石に混じって無斑晶ガラス質安山岩の石がありました。つい最近なじょもんで石器つくりを体験したという参加者が石を割って簡単に槍やナイフを作って見せました。こんな体験もジオラフティングならではです。

 ラフティングガイドさんが言うには、津南の川下りコースには、田んぼから余った農業用水が各所で滝になって落ち込みロケーションが良いといいます。車で走っていては絶対に見られない川からの眺めを一度経験してみませんか?

 ちなみに私の所属するNPOでは地域おこしに役立てたいと今年中古のラフティングボードを2艇購入しましたが、まだ装備等不十分で来年度から活用を考えています。ラフティングに興味のある方、一緒に地元の川や池で楽しみませんか。

(2022年10月15日号)

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簡易式プラネタリウム

津南星空写真部・照井 麻美

 大地の芸術祭作品はまつだいの農舞台にあります「関係-黒板の教室」を始め、鉢の「絵本と木の実の美術館」など廃校になった校舎や教室を使った作品がいくつもあります。作品の中には学校に残された教材を活用した展示物があり、机や椅子、地球儀など懐かしいものを見つけることができます。

 その中で旧大赤沢分校内の「記憶のプール」という作品が展示されている部屋で見つけたのが「天体投影機」です。星座を模して穴をあけた球体の中に光源を入れて、天井や壁などに星座を投影する教材です。

 昭和30年代ごろ、全国の小中学校に天体望遠鏡や理科機器が数多く納入されるようになり、この天体投映機もその中の一つと考えられます。

 今では投影機を小学校などで目にすることはほとんどありませんが、十日町市中里にあるプラネタリウム「ドーム中里きらら」では8月から毎月2回の投影が行われるということで、星空に少しでも興味を持ってくれる人が増えてくれればいいなぁと思うのでした。

(2022年10月8日号)

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落ち葉の下のクロサンショウウオ

県自然観察指導員・南雲 敏夫

 春先に用水路の端の溜まりや田んぼや山間地の溜池などに、白いアケビ状の卵を水中の枝などに絡めて産卵していたクロサンショウウオ。実は水の中に入るのはこの産卵期のみで、産卵が終わると森の中で生活しています。この写真は6月ですでに産卵は終わって森

の中で生活している姿です。

 一般の方はサンショウウオはずーっと水中生活していると思っている方が大部分ですが、ずーっと水中で生活しているのはオオサンショウウオくらいなもんです。ハコネサンショウウオみたいに肺呼吸でなくて皮膚呼吸していてあまり水辺から離れない種類もいますが…。

 で、春の産卵の池からかなり上にあるブナ林の落ち葉の中に2匹いた事もありますので、やはり移動距離は相当なものだと思いますね。落ち葉の下などはクモ類やヤスデ類、ウカドウマ類や小さな昆虫などが豊富に生息していますので、それらを食べて生活しています。大きな朽ち木の下などでも見つかる事もあります。

 ブナ林の落ち葉などをかき分けて探してみませんか。

(2022年10月1日号)

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ヒメジョウゴゴケ

県自然環境保護員・中沢 英正

 地衣は身近で見られる菌の仲間である。菌類にはキノコやカビもあるが、彼らとは生活様式がまったく違っている。

 地衣は体の中に藻類が入り込んで共生しているのだ。体内で光合成を行うため、キノコやカビのように体の外から養分を摂る必要がないのである。住処を与える代わりに養分をいただくという関係なのだ。だから植物が生えることができないような過酷な環境でも生きていける。

 ヒメジョウゴゴケ(写真)は地上や岩上でよく見かける地衣だ。地衣は樹幹や岩などに張り付いているが、この地衣は高さ1センチほど立ち上がる。ラッパのような姿が特徴的だ。小さな虫のための盃に見える。

 似たものにジョウゴゴケやアカミゴケがある。アカミゴケは赤色の子器(胞子をつくる部分)がついていれば間違うことはないが…。

 日本には1600〜1800種の地衣が生育しているといわれるが、姿が似ているものが多く、見分けるのは非常に厄介だ。

(2022年9月24日号)

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中子の池は奥が深い!

津南案内人・小林 幸一

 津南町自然に親しむ会の中子の池自然観察会に出かけてきました。中子の池は残雪と池の周りで咲く桜がカメラマンの人気撮影スポットになっていますが、自然を観察しながらゆっくりと歩くと2時間ほどかかる周囲の長い池でした。

 また周遊コースでは貴重な植物が生息し、絶滅危惧種のミミカキグサ・ミズニラ・ヒツジグサや浮島も見られます。

 その稀な環境は、高野山に降った雨や雪が何十年もかかって湧き出す冷たい水が影響しています。今回の観察会で分かったことは、湧水が川のように流れる入江のような所が数カ所あり、水辺の植物が折り重なって泥炭層を形成し、池の水位が上がると空気を貯めこんだ泥炭層が剥がれて浮き上がり池に流れ出すものだと理解しました。

 この浮島は人が乗れるほどの大きさと厚みがあり、いくつも池を漂っていますが、強風で岸に打ち上げられた浮島に上がるとスポンジのような弾力があります。

 また湧水口には各所に給水管が見られ、離れた集落まで引かれているとお聞きしました。

 津南町自然に親しむ会では随時会員を募集しております。先週は志賀高原で湿原観察会を実施、10月15日には樽田の森林セラピー基地の自然観察と40周年記念でブナの講演会を予定しています。

(2022年9月17日号)

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平和を願う塔 

津南星空写真部・照井 麻美

 4月29日より開催されている大地の芸術祭。作品の数々を皆様はご覧いただけましたでしょうか。

今回はライトアップされた「手をたずさえる塔」という作品をご紹介いたします。

 こちらの作品は第一回から参加されているイリヤ&エミリア・カバコフの展示作品9点目となり、「カバコフの夢」という新旧の展示品を合わせた集大成の作品となっています。

 新型ウイルスのまん延や世界情勢の不安から世界が分断される中、人々の繋がりや平和などを表現した作品の輝きは未来の安定を願うかのようでした。

 また、こちらの作品はアートディレクター・北川氏によると「この塔は聖堂のようなもの」と表現されていることから塔のモニュメントは十字架のように見えるのですが、その十字架は東西南北を表していることに撮影をしている中で気が付きました。

 ライトアップは日没から21時に行われていますので会期中にぜひご覧ください。(作家名:イリヤ&エミリア・カバコフ、作品名:手をたずさえる塔、場所:松代)

(2022年9月10日号)

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おーっと!相手が違うよー。

県自然観察指導員・南雲 敏夫

 カエルの繁殖期になると時々相手を間違えるというか(待ちに待った相手のカエルというか)、来た相手に飛び掛かかって背中につかみかかる。

 これはトノサマガエルの上にツチガエルが乗っていた様子。

 間違えられたカエルは大迷惑だが相手の背中に乗ったカエルはどうなんだろうかなーっていつも思うけれど…相手が違う事が判らないのかねえ。あっ抱きつく相手が違ったと…。 

 渓流に住むナガレタゴガエルも流れてくる流木に抱きついたり、魚類のヤマメやイワナに抱きついたり、ともするとメスと間違えてオスに抱きついたりと。

 大抵間違って抱きかれると「俺は男だからは違うぞーっ」とクックックッと言ったようなリリースコールの声を出すそうですが。

 それにしても抱きつかれた相手は相当の力で締め付けられるので、ともすれば死んでしまうと言う事もあるそうですので、繁殖期のオスはもう精一杯の努力もしているんですね。生き物の世界もたいへんだなー…。

(2022年9月3日号)

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カワラナデシコ

県自然観察保護員・中沢 英正

 子どものころ、集落周辺の河原でよく見かけた。きれいな薄紅色の花(写真)が印象に残っている。この頃は見かける機会がずいぶんと減った。

 明るくて開けた草地を好む。茎・葉・花すべてが繊細なつくりになっている。茎は細く上部で枝分かれするため花時は周りの草木に寄りかかるようにして耐えているものもある。

 花びらは薄く、先が糸状に裂ける。雨に打たれるとしな垂れてちょっとみすぼらしい感じとなる。

 秋の七草のひとつだが、咲き出すのは7~8月の暑い盛り。それなのにこの植物は暑さが苦手。湿気もダメ…。地球温暖化の影響が大きくのしかかりそうだ。

 別名「ヤマトナデシコ(大和撫子)」。日本女性を表現する時によく用いられる言葉だ。

 この植物は人の暮らしを利用して種を存続させてきたむきがある。草刈りがなされなくなり藪となってしまうとあっという間に姿を消してしまうからだ。

 絶滅が危惧される自治体も出てきている。

(2022年8月27日号)

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黒滝川の夫婦滝

津南案内人・小林 幸一

 秋山郷に滝は数々あるが、近くにあってもなかなかたどり着けない滝がある。見玉の黒滝橋の直ぐ上流。春の芽吹き前や晩秋には橋から2筋の滝が見えます。

 私はこれを見玉の夫婦滝と命名し、切明の夫婦滝より近いので、此処を見玉の新たな観光スポットとして広めたいが、何せ近くにあっても木々に隠れてなかなか見えない滝です。

 黒滝川はV字渓谷で沢登りの技術がないとなかなか登れない滝ですが、今回は滝の真下まで行ってみようと2度目の挑戦! 岩にへばりつきながら滝をめざし、あと少しの所で川に阻まれ決死の大ジャンプを試みますが、力及ばず川の中にドボン! 腰まで水につかり、此処からは水と友達、何とか滝の下までたどり着くことが出来ました。

 橋から見えていた滝は一番上の夫婦滝で、その下には巨石で組まれた天然の砂防ダムのようになっていて幾筋もの滝が落ちています。

 この景色を橋から多くの人に見てもらうには手前の雑木を何本か伐れば見えるので、見玉の新たな名所になると思います。

(2022年8月20日号)

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倉俣の打ち上げ花火 

津南星空写真部・照井 麻美

 今週は長岡の花火大会でした。フェニックスや正三尺玉など大迫力の花火は体に響き渡る轟音とともに大輪の花で夜空を彩ります。

 今や慰霊・復興・平和への祈りなど様々な思いを乗せて打ち上げられる花火は夏の風物詩となっています。

 妻有地区では集落ごとのお祭りで花火を打ち上げることが多いように感じますが、全国的な歴史から読み解くと打ち上げ花火の多くは江戸時代の飢饉による犠牲者への慰霊が始まりのようです。

 江戸三大飢饉の中で最も被害の大きかった天明の飢饉は多くの犠牲者を出し、時の将軍・徳川吉宗は、この犠牲者らの慰霊のため、水神祭りとして隅田川で花火を打ち上げたとされています。

 時を同じくして秋山郷でも大秋山村や矢櫃村が飢饉のため廃村し、のちに天保の飢饉でも甘酒村が廃村する結果となりました。

 現代でも自然災害や未だ続く感染症など様々な思いを胸に夕べの花火を見上げてみてはいかがでしょうか?(撮影日:2021年9月20日)

(2022年8月6日号)

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モウセンゴケに捕まったアキアカネ

県自然観察指導員・南雲 敏夫

 食虫植物として有名なモウセンゴケ、各地の湿地帯や亜高山帯の高層湿原などに多く見られる。

 丸い独特の葉の先に丸く粘りのある粘液が付いており、なかなか強力で昆虫などが触れるとまず逃げられない。

 画像はアキアカネが捕まっている様子だが、トンボの場合はかなりモウセンゴケ本体よりも大きいが、やはり羽がくっつくと動けなくなり暴れるとなおさらいっぱいの粘液に触れてしまってどうしようもなくなる。

 この粘液は捕らえた後で消化液を出して虫を溶かして養分として吸収する。山中の湿原などでは次第に分布を広げて絨毯の毛氈(もうせん)のように見え赤く丸い葉姿がコケのようにも見える。

 それでモウセンゴケと言うが、尾瀬には葉がとても長く伸びるナガバノモウセンゴケと言うのがありそれてモウセンゴケの中間型のサジバモウセンゴケと言うのもある。それにしても、こんな小さなコケでも秋になると綺麗に紅葉して湿原のあちこちに赤い集団が見えるのも湿原のおもしろさである。

 見かけたらぜひ観察してほしい。

(2022年7月30日号)

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コマツナギ

県自然観察保護員・中沢 英正

 この季節、道端や河原などで暑い陽射しを浴びながら花を咲かせている。 

 漢字にすると「駒繋」。この植物は馬を繋ぎ止めておけるほどに強靭であることが名の由来となっている。もう一説に、この植物が馬の好物で傍をいつまでも離れないというのがある。由来がどちらにしろ、馬が人の暮らしに欠かせない時代があったことの証である。

 この植物は木に分類されたり草に分類されたり…。秋になって茎の上部は枯れてしまうが、下部は木化して残るためである。

 この花や葉しか食べないチョウがいる。「ミヤマシジミ」という翅を広げても3センチくらいしかない小さなチョウだ。幼虫時にはクロヤマアリなどのアリと共生することが知られている。このチョウにとってコマツナギとアリは欠かせない存在であり、どちらが欠けてもこのチョウには未来がない。現在でも微妙な立場にあり、絶滅危惧種に指定されている。

 この植物も重要な役目を担っているのだ。

(2022年7月23日号)

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消えた日記

津南案内人・小林 幸一

 以前、屋敷の秋山郷民俗資料館を訪れた時に、ガラスの扉の中に此処の主の日記が展示されていて、よく見ると明治・大正・昭和の出来事が克明に書かれています。

 私は此処での大正時代の発電所工事を調べているので、工事の始まった大正9年から12年までの日記を探しましたが、どうもその部分が抜けている。管理人のおばあちゃんに聞くと、前にそのまま展示をしていたら、誰かに持って行かれたようだ、と悲しげに答えた。

 後で調べると日記は明治6年に此処で生まれた山田清蔵さんが明治42年から昭和26年まで、ほぼ毎日書き綴った山里の暮らしである。山田清蔵さんは95歳で他界したが、後継ぎの山田庄平さん夫婦が資料を集め昭和43年に民俗資料館を開きました。

 山田清蔵さんは農業の傍ら駄賃稼ぎや小売りを行い、行商人や発電所工事関係者・役人などを泊め、この地域ではわりと裕福な家でした。明治の義務教育免除地でありながら寺子屋のような学校で読み書きを学び、秋山郷では知識人だったと思われますが、その几帳面な人が書いた日記がなぜ盗まれなければならなかったのか?

 他にも欠けている年度もあり、目的は分かりませんが、ただ毎日の山里の暮らしに興味がるのは、民俗学者か発電所の工事関係者くらいしかいないだろう。

後に膨大な日記を何泊もして整理した大学の先生から「これは貴重な資料だから鍵のかかるところへ入れて置いた方がいい」と言われ、現在はガラス戸の中に納まった山田清蔵日記、その消えた年号が示すものは何か? なぞは深まります。(秋山郷民俗資料館は現在閉館しております)

(2022年7月16日号)

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蛍と天の川

津南星空写真部・照井 麻美

 記録的に早い梅雨明けをし、急激に真夏に突入したようなお天気ですが、7月7日の七夕に何をお願いしましたか?

 夏至を過ぎた小暑の今頃、夜8時過ぎに夜空を見上げると横たわった天の川が南東方向に見えてきます。ぼんやりとした天の川の右端を辿れば、赤い星が胸にあるさそり座があり、左端を見れば川を渡るようにはくちょう座があります。

 この写真は蒸し暑い夕方に川沿いや田んぼ近くで蛍と出会った6月末に撮影したもので、山並みに白っぽく映るのが天の川です。

 今年は蛍の数が例年より多く感じられ、まさに乱舞とはこのことをいうのだろうと思い、撮影をしていた私自身、蛍と天の川の競演に心奪われ見惚れてしまいました。

都心にいると小さなビニールハウスの中に飼われている蛍ぐらいしか目にすることができませんが、家のすぐそばで数十匹の蛍を見ることができる生活環境に改めてこの地域の素晴らしさを感じました。この先もたくさんの風物詩が見続けられるよう自然と共存していければと思いました。

(2022年7月9日号)

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