
雪国妻有今昔物語
シリーズ連載

ヘッツイと呼ばれる竃(かまど)の上に、握り飯にベロを刺し、祝いの「年取り」を行った
竃神様の年取り
昭和33年1月3日、十日町市川治で 写真・文 駒形 覐
新型コロナウイルス禍による自粛で、今年の正月はどこも静かだったみたいで、なんとなく正月三ヶ日も終わってしまった。
ところで妻有地方では、昔から1月3日を「竃神様の年取り」といっており、ヘッツイと呼んでいる竃(かまど)のある家では、ちょっとした祝い行事をしていた。『川西郷土読本』(昭和14年刊)は、次のように記している。
「一月三日、竃祭り。此日夕飯に粟飯を炊き、それで小さい握り飯を六つ作り、之に細い真直の棒三本、先一寸ほどを曲げた棒を三本さして、竃神に供える。伝説に曰く『此神様は大変貧乏の上、女の子ばかり六人持って働くものなく、他の神々は皆三十一日に越年するが、此の神様は三日に到って漸く米少々を得、それに粟少々を混じて越年せしとか』という」。
十日町市の赤倉や中仙田などでは、女の子は12人だと言っており、その人数分の握り飯を供えている。この握り飯は女の子が食べることになっている。また、この日の夕食は「三日トロロ」と言って、トロロ飯を食べたものである。
握り飯に刺した先の曲った棒をベロと呼び、子どもたちはヘッツイの前で車座になり、中にいる子がベロを手のひらにはさみ、「ベロベロかめろ/尊いかめろ/親でも子でも/屁こいた方に/向きゃれ向きゃれ」(江道)と唱えながら回し、ベロの先が当った子どもが次の番になるという遊びをしていたものだ。
今は煮炊きのすべてがガス、電気。どの家からもヘッツイは姿を消してしまったから、「竃神様の年取り」行事は、もう忘れ去られてしまったみたいだ。
(2021年1月9日号掲載)