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シリーズ連載

関口市政3期 4383日の検証

前回市長選の最終日、最後の街宣で訴える関口市長(2017年4月22日、本町3丁目で)

​「市政は継続」、「対抗軸が必要」

どう見る関口市政、次期に向け関係者の証言

 来年4月30日で関口芳史市長(61)は任期満了。その3期12年の市長在職日数が4383日。改選期まで8ヵ月余。この時期の「検証」は、現在進行形の市政にあり、それは時々刻々、すべてが「市民のため」がベース。検証シリーズ最後は、関口市長に関わる人たちに、これまでの3期、これからの市政をどう見るか、聞いた。実名で登場する人、「名前は出せない」とする人、その立場立場で異なるが、関口市長の近くで見てきた市政への言葉は、これからの8ヵ月を示唆する言葉でもある。

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 この写真は、前回の市長選の投票日前夜、2017年4月22日午後7時25分、本町3丁目での街宣打ち上げで、選挙戦最後の街宣挨拶をする関口市長。道路を埋めた市民は、現職市長の言葉をしっかり聞いた。この場面にもいた関口後援会メンバーは、これまでの3期11年4ヵ月を振り返り、親心的に話す。

 『政策的な対抗軸がないのは、現職にとってはある意味、不幸なことだ。それは取り組む政策を比較検討することができないから。単なる批判的な対抗軸ではなく、まっとうな政策議論としての対抗軸があった方が、現職にとっては取り組む施策の自信にもなり、それにより新たな政策論が生まれることになる。3期ともなれば、いろいろな声や権力へのすり寄りがあるだろうが、関口の性格からその辺は心配していない。ただ気がかりは外の声、外野の声が本人にどこまで届いているのか、伝わっているのかだ。在職年数が増えれば、自ずと権力が集中し、周囲はなにか言いづらくなる傾向だ。当選回数を積むほどに、厳しく意見する人間が本人の周りには必要だ』

 11年前の市長選初当選は「素人集団選挙」が奏功した。その一騎打ちの現職相手、田口直人氏(74)は福祉事業のNPO理事長を務め、取材を受けた24日も福祉関係研修会で講師を務めた。

 『地域にある資源を使って、新しい事業に取り組もうとする姿勢が見えない。国や県の事業を受け入れることは大切だが、十日町市として新たな取り組みを示すことがリーダーの役割でもある。補助金関係ではない自主的な行政事業を生み出す取り組みを求めたい。この地に暮らす人たちが、我が事と考えるものを作り出していくべきだ。地域には、まだ小さいが様々な分野で取り組みが始まっている。行政が少しバックアップすることで大きく成長する事業がある。そうした情報は埋もれてしまっている場合が多く、それだけに行政が地域に出向くことが求められる。女性の力もそうだ。依然として男社会のこの地域だが、能力の高い女性は多い。それを政策的に活用できるのが行政。地域の女性人材をもっと活用すべきだろう』

 

 12年前。市長選出馬を決めた、あの時の思いを共有した人は、いまも、あの時の思いがよみがえる。後援会活動を共に歩みながら、関口市長を見守った人は、この先を話す。

 『東大時代の同期生が省庁や大手民間で相応のポストに就き、国の方向性をいち早く察知できる力は大きい。これは市政にとって大きな力になっている。いま61歳。3期12年は長いと言えば長いが、まだ3期ともいえる。年齢からいってもここで辞めて、この後の人生もある。その先を考える時、やはり政治の世界だろう。国政ならば現職との関係が難しい。県なら知事もあり得るが、そこまで冒険できる気概があるかどうかだ。本人は多選の弊害は分かり切っているが、そうは言ってもバトンを託す人材がいないのも事実。仮にこの人ならと、市長の目にかなう人材がいれば、すんなりとバトンタッチするのではないか。だが、市政の継続から言えば、ここで辞めるのは十日町市にとってもよくない』

 初当選から選対幹部を務める青柳安彦氏は、十日町市観光協会長でもある。言葉を選びながら取材に答えた。

 『継続性が求められる市政にあって、新しいことへの取り組みを次々と展開する市政を進めているなかで考えると、関口市長には続けてほしい思いだ。だが決めるのは本人。これまで本人が決めるまで、こちらから話を持ち出したことはない。我々はいつもその決断を待つのみだ。大地の芸術祭を市政に取り入れ、地域づくりや移住定住の取り組みと結びつけている点は評価できるし、高齢化が依然として進んでいるなかだが、若い層の人口は増えている。関口氏はもともと経済人であり、やはり地域づくりのベースは経済。ただ、人口減少が進む中では経済に手をかけても、なかなか成果が出ない状態だが、経済人である関口氏の手腕には期待している』

 改選まで8ヵ月。前回は年末の市議会定例会で進退を聞かれたが具体的な表明はなく、翌年新年の市議会全協の場で3選出馬を表明した。9月2日から市議会定例会が開会する。だが、一般質問通告には市長選への質問はない。市長の胸の内は「決まっている」と感じる言葉を何度か聞いた。だが、それを発する段階には至っていないのだろう。今年も早や9月。4383日まで、あと244日だ。

(2020年8月29日号掲載・終/恩田昌美

 
 

手前が十日町看護専門学校、前方が全面改築した十日町病院。その間は現入院病棟。この跡が駐車場になる(右道路は西線、空撮写真・十日町市提供)

建設場所の変更を小黒沢住民に詫びる関口市長(2010年7月28日、小黒沢集会所で)

「病診連携」、地域医療のあり方を

県立松代病院、「ボールは県にある」

 あす23日、6年かけて全面改築した県立十日町病院は竣工式を迎える。来月11日、新しくなった病院全館が開院し、新病院が本格稼働する。今春開校の隣接する県立十日町看護専門学校との同時オープンは間に合わなかったが、半年遅れは、この県立十日町病院の現在地での全面改築までの経過を振り返れば、「よくぞ実現できたものだ」との感慨が湧く。 関口市政の1期は、JR東・宮中取水ダム不正取水問題と2004年の中越地震で大きな被害を受けた県立十日町病院の改築問題が、その1期4年の最大懸案ともいえた。特に十日町病院改築は、建設場所をめぐり、前々市長、前市長時代からの方針転換となった。市長就任1年3ヵ月後、建設場所に同意した地域住民に「頭を下げる」ことから、関口市政の十日町病院改築は始まった。

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 2010年7月28日。十日町市小黒沢の集会所には、同地区31戸すべてから40人余が出席、関口市長の言葉を厳しい表情で聞き入った。前年、県は震災被害による「十日町病院耐震診断」を行い、「早期改築が必要」となり、事態はいっきょに全面改築に進んだが、肝心の建設場所問題が目の前にあった。

 厳しい表情で見つめる小黒沢住民を前に関口市長。「説明不足と共に当時関わった者として申し訳なく思っています。何卒ご理解をお願いします」、同行の村山潤副市長、担当市職員全員で深々と頭を下げた。当時関わったというのは、前々市長・滝沢信一市長時代、関口氏は助役として同地一体の約7㌶(地権者23人)の病院建設用地の同意取りまとめを行った。この転換に一時は地元で訴訟の動きもあったが、この「お詫び」が、その後の現在地での全面改築につながった。

 この小黒沢地区は、当時の約束通り高規格道・十日町道路インター建設が決まり、地元地域ではインター周辺地域活用策の検討を始めている。

 あす23日の竣工式を前に17日、関口市長は本紙の取材に答えた。「十日町病院を県立で残せたということ、これは大きな成果だと思う。隣には県立十日町看護専門学校が開校している」。10年前、住民の厳しい言葉を受けつつ、全面改築による県立病院を維持できたことへの実感だろう。

 

 だが、地域医療はこれからだ。2次医療の県立十日町病院。十日町市・津南町・栄村が医療圏の中核病院である。同エリアの公立医療機関は県立十日町病院、県立松代病院、町立津南病院。厚生連中条第2病院はなくなり、国保診療所はあるが病院はこの3機関。地域には民間医院、診療所があり、地域医療の方向性は『病診連携』。病院と診療所との連携による地域医療体制の充実だ。

 中核病院の県立十日町病院・吉嶺文俊院長は話す。「十日町病院の入院平均年齢は80歳前後と高齢化し、リハビリがより重要な要素になる。退院後、福祉施設や在宅にスムースにつなげる取り組みが大切で、そのためにも地元市町村との連携が必要」。運営方針にあげる『しなやかに包括ケアを支える』の理念を具現化し「訪問診療、訪問看護、訪問リハビリの対応が求められる」と方向性を示す。ただ課題は医師確保だ。

 

 関口市長はその医師確保を話す。「県立病院に県立看護学校を併設できたことで新潟大との信頼関係がさらに強くなった。この地域に必要な医師はゴッドハンドの医師ではなく、地域医療における総合診療にしっかり取り組める医師。総合医療に取り組む若い医師のグループがあり、そうした医師が来てくれる地に十日町地域をしたい」。市は医学生研修費補助、医療研究費年間100万円助成など支援制度を創設し、市内勤務期間により免除規定を設ける。

 一方で病診連携のあり方が課題。中核病院がその中心になり、吉嶺院長はそこに地元福祉施設・介護施設が加わった「医療福祉総合連携」を構築する。県立十日町看護専門学校が入る十日町市医療福祉総合センターは、その連携の拠点になる施設だが、課題は人的な体制と運営体制。同センターには新潟大の十日町市寄付講座の教授(医師)が常駐し、疫学調査など通じ地域の疾病状況の把握などに取り組む。今回の新コロナ対応でも、その教授・白倉医師らの活動が地域感染防止を主導している。

 

 県は公立病院の再編方針を示した意見に「県立松代病院は地元移管も一つの選択肢」などと県立外しを示唆する。だが十日町市は昨年末から再三県要望を行い『ボールは県にある』(関口市長)。

 「県には明確に言っている。医師の確保、県として県内医療圏をどうするのかと。精神医療は全県で行うと言い、それを示す事になっているが、それが試金石になりますよと。参考にしてほしいと説明したのは十日町市の保育園運営。民営化を進めるが、民営の手が上がらない可能性の所は市営でやると。発達障害などの子たちは市としての責任でしっかり運営すると。県の病院運営もそうあるべきではと」。県福祉保健部・松本部長との懇談で述べた言葉だ。

 全面改築の十日町病院が来月11日、いよいよ全院開院だ。地域医療の再構築はこれからが本番といえる。

(2020年8月22日号掲載/恩田昌美) 

女性750人を前に「十日町市は確実に知られる存在になっている」と関口芳史市長(2018年3月4日)

「市政に農業はないのか」、現場から

地域経済対策、商工業者から支援の声も

 市町村民所得という数値指標がある。自治体の事業所や家計など総所得を人口で割った数値。翌々年の年度末に発表され、新潟県内の直近公表数値は2017年・平成29年度の数値。データを見る限り、十日町市の市民所得はこの10年でわずかずつ上昇しているが、県平均を上回ることはない。一方、十日町市総生産額はその時の時勢を反映し、増減を繰り返している。実際の経済指数で比較資料にするのは総生産額から製造原価を引いた『付加価値額』が用いられるが、ここでは総生産額の推移を表示する。業種別(第1次・第2次・第3次)の推移も分かる。1次産業の主体は農業生産、2次は建設土木業、3次は医療・福祉・生活関連サービス業となっている。生活に直結する給与水準では新潟県ハローワーク管内別で十日町管内は低い水準にある。移住定住促進による人口増加策に積極姿勢を示す関口市政だが、その生活基盤づくりは、どう取り組んでいるのか。

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 市町村民所得の新潟県29年度数値によると、県平均287万3千円を超えている自治体は8市町村(新潟市・長岡市・上越市・見附市・燕市・聖籠町・湯沢町・刈羽村)。ここ数年の県内トップは湯沢町で29年度は381万円。十日町市236万1千円と144万円余の差がある。近隣では、南魚沼市258万7千円、小千谷市273万8千円、魚沼市255万2千円、津南町は223万7千円。

 地域経済政策は、その地域の地場産業のあり方に大きく関係する。十日町市は『雪ときものとコシヒカリ』を掲げ、今も観光看板にある。経済成長期、きもの産業は文字通り地域経済をけん引する一大産業で、「糸へん産業」と言われ、最盛期は年間600億円余の出荷額を誇り、「十日町あり」の名声を全国に広めた伝統産業。だが産業構造の激変の波は十日町に押し寄せ、伝統産業の冠はあるが内実の厳しさは増している。

 一方で農業分野は、その従事者人口の多さと共に、コメ農業の機械化で兼業農業者が増え、賃金ベースの低さを農業所得が補う形になっている。

 地域経済政策は、先のリーマンショックや今回の新コロナのような緊急事態時は行政も直接的なテコ入れができる。だが通常政策での個別的な取り組みは、地域振興策や誘客事業とのセット政策、新規企業進出、新規雇用支援、あるいは運転資金融資など限られた政策になる傾向だ。利益追求の事業経営、公平公正事業の行政施策だが、最近の公共政策分野ではこの両面の事業政策こそ、行政の守備範囲になってきている。

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 多産業で構成する地域経済。産業構造も時代の変化、社会ニーズと共に「変わる」ことを求められるなか、この10年余の関口市政の評価を、事業者や関係機関はどう見ているのか。紙上匿名を条件に本音を聞いた。

 商業経営者=以前は大売り出しや感謝祭など行っていたが、行政からの支援がなくなり、止めた経過がある。個別的に行政が補助金を出すのは難しいかもしれないが、行政の傾向として地元商業界の支援は極めて少ないように感じる。商業者は年々弱ってきているのは事実で、市の産業の一つとして見てほしい。

 農業経営者=最近の市議会の質疑を議会報などで見ても、農業分野のことは非常に少ない。なぜなのかと考えてみると、これという代弁者がいないことに気が付いた。つまり、しっかり農業現場のことを見て、聞いて、なにが問題なのかを掴んでいる議員が少ない。だから、議会の場で農業分野の質疑が少ないということになる。代弁者なのか、当事者なのか分からないが、十日町市でも相当数の人が農業に関わるのに、その農業分野が市政で表に出ないのは、やはりおかしい。

 小売業者=我々商業者は自分でできる事は自分でやる、当たり前のことだが、なんでもそうやってきているし、そうでもしないと、やっていけない。これからの時代は、まさに手弁当の時代。市役所もそうだろう。まさに株式会社十日町市役所という感覚が求められるし、そうしたコスト意識が大切。今度のコロナ禍は、そうしたことを教えてくれているし、来年の市の税収は相当に厳しくなるのでは。そんな時代のあり方を、今度のコロナは教えてくれている。

 十日町商議所関係者=地域経済界と行政は密接な関係にあるが、経済活動をバックアップする要素としては物流のスムースさや来訪者の利便性を増すなど、先ず行政に取り組んでほしいのはインフラ整備だろう。上沼道・十日町道路の開通などはその最たるもの。物流ルート、来訪者が気軽に来られるルートは、この地域経済を大きく後押しするはずだ。

 農業者=最近こんなことがあった。新型コロナの関係による国の持続化給付金が、農業者にも当てはまるということを、集まった10人ほどが誰も知らなかった。市外の人から情報をもらった人が教えてくれたが、こんなことは、行政がしっかり伝えるべきだし、農協だって、分かりやすく農業者に情報を伝えるべきだ。どうも、市行政と農協の連携がうまくいっていないように感じる。

 会社経営者=箱もの行政と言われるが、いろいろ作ったのは事実。トータル的な維持管理費を、しっかり市民に示し、今後の市行政に与える影響や、市民サービスとの関係など示す必要がある。新しい博物館なども、市民は無料で、行って見た市民が、その良さを口コミで広めれば、入場料より効果があるのではないか。他の施設も同様な視点で見る必要がある。

 商工関係者=4年前に商議所でアンケートを行ったが、4割が事業継承の意志がなく、2割がどうしようか定まっていない。つまり6割が次の展開がないというショッキングな数字が出ている。特に十日町は労働集約型の業態が多く、切り替えがなかなか難しいのが実情だ。つまり転換の難しさ。さらに言えば、伝統産業はすそ野が広く、そう簡単に産業転換できない事情も抱える。その意味では地元産業界だけの問題ではない。

 商業者=これまでのやり方を変えていく必要が、すべての分野で求められている。商業経営も、お客さんの買い物の仕方が変わってくれば、お客さんに合わせていかなくてはならないし、どの世界もそうなっていかざるを得ない。行政も同様だろう。この点をしっかり自覚しないと、行政は特別などと思ったら大間違い。商業はお客さんに認められる商いが必要で、行政は市民に認められる行政である必要がある。

 農業経営者=関口市政には農業はないのかと思うほど、市政の中で農業政策を感じない。市にすれば、JA十日町が頑張っているというかもしれないが、その農協が農業者は二の次、組織維持に専念している感じだ。これでは十日町市の基幹産業の一つが農業と、堂々と言えるのか疑わざるを得ない。要は優先順位が低いということか。そんなことを関口市政から感じてしまう。

(2020年8月15日号掲載/恩田昌美)

 

当選翌年、子育てをテーマに市民懇談する関口市長(2010年4月17日)

6月末で任期満了後、じろばたで働く田之岡志保さん(4日、川西で)

​待ったなし人口対策、「女性人口増を」

地域おこし協力隊72人定住率69%、移住定住​に力点

 人口推移データを見ると、一目瞭然だ。2009年、関口市長の就任時、年間出生数と死亡数は約2倍差。『毎日1人誕生し、2人が亡くなっている。つまり毎日1人の人口減』。昨年2019年は、それが3・5倍に開いた。『毎日3人余の人口減』が実態。ここに高齢社会の現実がある。この「人口の自然減」にどう対応するか、そこに行政施策のポイントがあり、自治体リーダーの政策の真価が問われる。とはいえ、全国の大多数の市町村は、この自然減に「決め手を欠く」状態。受け入れ制度充実で移住定住の促進、子育て支援で出生率アップなど人口減少対策を打ち出す自治体。関口市政はどう取り組んでいるのか。

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 初当選の2009年・平成21年、関口市長は国総務省が立ち上げたばかりの『地域おこし協力隊』制度をいち早く導入。全国の先駆け的な取り組みとなった。その理念は『地域に「お金」ではなく「人」をいれる』。高齢化が進み、集落支援の補助金を出しても、それさえも活用する「体力」が乏しい集落が多い現実は見た。そうした集落に人を入れることで「集落再生」をはかり、「元気づくり」に取り組む事業だ。

 最初の2009年度は5人を市内周辺地域に配置。以降毎年、協力隊を入れ、今年7月までに72人が各集落で暮らしながら活動を続ける。この総務省事業は事業費(人件費、準備費など)全額を国支援が得られ、最長3年の任期後、地域に定住することを視野に入れる「人口対策」でもある。十日町市は全国トップクラスの定住率69%余となり、地域おこし協力隊が定住へのステップになっている。

    

 今年6月末、協力隊の3年任期を終了した岩手生まれの田之岡志保さん(27)。7月から市内で働き始めている。川西・千年の湯近くの直売所であり食事処、加工品販売の『じろばた』。地域のお母さんたちが運営する。昨年12月に「企業組合じろばた」と法人化。朝から夕までフルタイムで働く。実はここは学生時代にインターンシップで来た所。「その時に感じた人と人との自然な関係が心地よく、ここだと、決めました」。地域おこし協力隊の募集を知り迷わずに応募。2017年7月から3年間、松之山・布川地域担当で入り、任期3年後の7月から、じろばたで働く。

 松之山での生活。「人と人との自然な関係」を実感する場になった。「草刈り機の使い方、野菜の作り方など当たり前の事ではありますが、それを自然な形で教えて頂け、そこに暮らす一人として自然に受け入れてくれる、その普通の感じが心地良かったです」。それは。インターンで感じた『予感』が、3年間を暮らす中で『確信』に変わった実感でもある。大学で専攻した「暮らし・環境のデザイン」や「価値創造デザイン・地域創生」を実感し、実践できる暮らしが、ここにあった。

 自家用の野菜作りにも取り組み、カモシカに先に食べられる経験も積み、そうしたこの地域での「当たり前の生活」を積む中で、ふつふつと湧いてくる思いがある。「まだまだ教えて頂くことばかりですが、この先、10年、15年後、いま私を助けて頂いてくれている人たちを、私が手助けできるようになりたいです」。それは、「昔からの人づき合いの中に、私も組み込んでもらえるようになれたら、と思っています」。

    

 地域の魅力とは。個々の感性によるところが大きいが、田之岡さんの言葉に、その「魅力」の一端を感じる。地域おこし協力隊による移住定住促進に取り組む十日町市の思いでもある。

 関口市長は、就任当初から『選ばれて住み継がれるまち』を市政理念に掲げる。当初は「選ばれるなら、何でもいいと思っていた」と明かす。それが大地の芸術祭で「越後妻有アートトリエンナーレの十日町」となり、『芸術祭ブランド』が広まり、地域おこし協力隊の応募増加、定住促進への相乗効果として表出している。

 では、どう選ばれたいのか、どう選んでほしいのか、今月3日の定例会見で話した。『最初は、どんな形でも十日町を選んでくれたらいいと思っていたが、選ばれるいろいろなパターンが出てきたのかなと考えている。IターンUターンが活躍しているまちとか、大地の芸術祭ブランドの中でおしゃれな感覚が好きだという方もいるし、そういう芸術祭などを活用し、まちのどこにでもあるようなものを尖がらせるようなまちづくりなど、できれば感性豊かな方たちに選ばれるまちになりたいという思いはある。どちらかと言うと、新しい方向性に一歩前に出て、先に飛び出していくような方に選ばれるようなまちになりたい。そのことが市民の自信にもなり、また入ってきた方が活躍して、触媒になって、地域の意識がどんどん変わっていく、そういう動きも出てきている。さらに、そういう方々に憧れて来たくなるまちでありたい』。

10年で​女性1,000人減、移住110世帯381人

 2009年導入の地域おこし協力隊。その総数は今年7月で72人となり、うち42人が退任後に定住。定住率68・9%は全国トップクラスだ。

 移住定住への財政的な支援を手厚くする十日町市。2014年・平成26年度からの移住世帯支援(40万円助成)は、昨年度までに110世帯が受け定住、その家族総数は381人になっている。

 2020年度、十日町市は30、40代職員13人で作るワーキングチームが立案の「人口減少対策」を事業化している。その一つでポイントになるのが『女性人口の増加策』。従来の行政の「公平公正」の建前論を乗り越え、ターゲットを絞った人口対策を打ち出す。

 その第一弾は『市内在住女性が市外在住男性と結婚し、市内に定住する場合、最大40万円助成し、さらに住宅取得の場合は最大60万円の追加補助』。つまり市外男性と結婚し、市内に家を求め定住した場合、100万円の助成を受けられる制度を4月からスタートしている。「従来の枠に捉われない取り組みにより、定住人口増加につなげたい。将来的にも女性が増えないと、人口は増えない、この原点を捉えた事業」としている。 

 女性人口は、20、30代は2010年は4863人だったが、2020年3月末では3871人と992人減。この10年間余で約1千人の女性人口が減少しており、事態の深刻度を増している。「女性が増えないと、人口は増えない」、この原点に取り組む関口市政。人口対策が、行政の根幹をなす現実が、ここにもある。

(2020年8月8日号掲載/恩田昌美)

 
 

初当選し500人が迎え初登庁の関口芳史市長(2009年5月1日、市役所前で)

「4選へ」、あと9ヵ月、まだ9ヵ月

3期12年、来年4月30日満了、山積する課題

 来年4月30日、任期満了を迎える十日町市・関口芳史市長(61)。4383日は3期12年間の任期満了の在職日数。今年1月6日、新年最初の定例記者会見で翌年の市長選への進退を問われ、こう答えた。『毎日の業務に頑張る日々であり、辞める時は早めにと思っている』。今期限りで退任するときは「早めに表明したい」ということ。はや8月。任期満了まで「もう9ヵ月しかない」、いや「まだ9ヵ月もある」なのか。いやいや、庶民感覚的には早めという時期はもう過ぎ、「退任はないということだろう」。巷間では「4選出馬」を確実視する声は多い。あと在職9ヵ月。過去3回の市長選は任期満了直近の日曜が投票日。この例にならうと2021年4月25日が投票日となる。この市長選、関口市長初当選の2009年は第4回大地の芸術祭の年であり、来年2021年は第8回大地の芸術祭の年というめぐり合わせの市長選でもある。関口市長のこれまでの足跡を検証し、来年の市長選で問われるであろう市政課題を探る。

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 東京大卒・野村證券海外トレーディング課長(ロンドン)・関芳部長・十日町市助役・三条市収入役と歩み、49歳で市長選出馬の決意を語ったのは2008年(平成20年)11月17日。市内のNPOあんしん事務所2階で出馬表明の会見。『十日町市を21世紀のトップランナーにする』、『市長が代われば職員意識も変わり、市も変わる』。この決意表明は、市町村合併で誕生の新十日町市の初代市長を決める市長選(2005年5月1日)で当選の現職・田口直人市長との一騎打ちを意識した言葉だった。

 県立十日町病院の建設位置問題、不正取水発覚のJR東宮中取水ダム維持流量問題、市町村合併後の市中央部と周辺町村部との関係、さらに行政の行財政改革・職員適正数など難題山積。さらに合併で『過疎債適応自治体』になった新十日町市だが、合併特例債の活用と新市全体の「均衡ある地域振興策」など、新市ならではの悩ましい課題が数多くあるなか、新市の2回目の市長選に、関口氏は立った。

 激戦だった。現職の万全な組織戦に対し、一般市民主導の草の根選挙。そのキャッチ言葉は『チェンジ・変えよう』『これでいやんか十日町』。年末から年始にかけ住民懇談会を百ヵ所余開く。徹底した市民運動が奏功し、2020票差で初当選。初登庁の5月1日、市役所玄関前に支持者ら500人の大群衆が集まり、新市長・関口氏を迎えた。「いまの十日町市を変えたいという市民の多くの声を、選挙戦を通じてひしひしと感じた。責任の大きさを感じている」。市長席に着いた新市長就任の言葉だ。

 4年後、2013年5月21日、再選を果たした関口市長。一騎打ち選挙で約9千票、25%の批判票の結果を受け、「市民の判断だ。しっかり考えながら、市政にいかしていきたい」と答え、「市民に生活への不安があった。市町村合併で自分たちの生活にどういうメリットがあるのか、と疑問を持っている人が多いのではないか。次の4年間で考え、そうした不安を解消する取り組みを実現していく」と、再選の喜びより選挙戦を通じて感じた市政の今後の課題を述べた。

 さらに4年後の2017年4月23日、前回と同じ対決で3選を果たした関口市長は市政への自信を見せた。「今回の選挙で一つ成長させていただいた感を抱く。合併以降続ける取り組みに自信を持ち、住む人、訪れる人、活動する人を増やす取り組みをさらに進める」と初当選から掲げる『怒涛の人の流れを創る』市政に確信を抱いた3選。その市長任期が来年4月30日、満了を迎える。

 あれから11年、この時々の言葉を、市民はいま、どう受け止めるているのか。

(2020年8月1日号掲載/恩田昌美)

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